米SendmailのEric Allman氏
米SendmailのEric Allman氏
[画像のクリックで拡大表示]

 「一部の先端ユーザーは今年中に,それ以外でも2006年には『DomainKeys Identified Mail(DKIM)』の導入が始まるだろう」---。米SendmailのCTO(Chief Technology Officer)であり,DKIM仕様策定の中心人物であるEric Allman氏は9月26日,IT Proの取材に対して,DKIMの現状や今後の見通しなどについて語った。

 DKIMとは,デジタル署名(暗号)ベースの送信ドメイン認証技術。米Yahoo!の「DomainKeys」と米Cisco Systemsの「Identified Internet Mail(IIM)」を統合した技術。2005年6月に両社によって発表され(関連記事),2005年7月には仕様がインターネット・ドラフトとしてInternet Engineering Task Force(IETF)に提出された(関連記事)。「2005年1月には統合に向けた議論が始まっていた」(Allman氏)

 現在は,仕様について話し合うIETFのワーキング・グループを作るために必要なドキュメントを作成している段階。ワーキング・グループが作られれば,そこで議論を重ねて,最終的に仕様をRFC(Request for Comments)にする。ただしAllman氏は,RFCをいわゆる“インターネット標準”の「Standard」にすることにはこだわっていないという。「Standardにしようとすると,とても時間がかかる」(同氏)ためだ。参考情報として扱われる「Informational」や,主に実験的なプロトコル仕様を記載する「Experimental」でも十分とする。「RFCにすることが重要」(Allman氏)。同じく送信ドメイン認証技術の一つである「Sender ID」は標準化作業が“頓挫”し,2005年6月にExperimental RFCとして認定されている(関連記事)。

 ワーキング・グループについては,「IETFの定例会が開催される11月までに作りたい」(Allman氏)。また,RFC化は2007年の終わりごろになるだろうと予測する。ただし,現状でも仕様はインターネット・ドラフトとして公開されているし,相互運用可能な実装が存在する。オープンソースとしても公開されている。このためAllman氏は,RFC化を待たずに導入は始まると予想する。「2006年には各企業/組織で採用が始まる。一部のユーザーは今年中に導入を開始するだろう」(同氏)

 「現状では,(Sender ID/SPFのような)“パス・ベース”とDKIMのような“暗号ベース”の技術の両方を利用したほうがよい。しかし将来的には,DKIMの技術のほうが有望である可能性が高い」(Allman氏)

◎参考資料
DomainKeys Identified Mail (DKIM)