私は先週,米MicrosoftのCEO(最高経営責任者)であるSteve Ballmer氏と,会長兼チーフ・ソフトウエア・アーキテクトのBill Gates氏が,Microsoftの再編成に関するニュースを自社の社員にどう説明したのかを見聞きすることができた。

 ご想像の通り,そのメッセージの多くはMicrosoftが社外に発したニュースと同じだった。「われわれは組織のさらに下部から来る多くの意思決定を知るために,これらの事業グループをまとめようとした。それこそわれわれがより高い敏捷さと,スピードと,素晴らしい活動を伴って動けるようにする方法だ。行動に密接につなげられる意思決定が増えれば,われわれはより速く動けるのであり,より速く革新を進められ,そして市場に速く到達できるのだ」とBallmer氏は語った。

 この再編成に関しては,いくつか途方もない想像も耳にした。例えば,3つの新しい事業グループは将来の分割を想定している,とか。だが,それは事実ではない。「われわれの製品がともに動けば,われわれの顧客に恩恵があるとわれわれは信じている。われわれはクロス・グループで働かせる方法を考え出そうとしている」と同氏は付け加えた。Microsoftは今でも7つの独立採算のセンターを持っているが,いまやそれらは3つの事業ユニットの下に組織されている(これは恐らく実際にはMicrosoftの組織構成が以前より複雑になっていることを示している)。

 ビッグ・ニュースはBallmer氏が言ったように「ソフトウエア・ベースのサービス展開」にMicrosoftが新たな重点を置いたことである。動きが速く革新的なMSNグループが,率直に言えばノロくて硬直したWindowsグループと統合されたことは偶然ではない。

 MicrosoftはMSNの興奮と反応の速さのいくらかをWindowsの独占と市場のパワーに融合させたいと考えている。しかし同社は,米Googleや米Apple ComputerのiTunesのように市場の力に,より素早く対応できる方法を確立することも試みている。「この会社が作るソフトウエアはすべてそれに付随するサービスを持つことになるだろう」とBallmer氏は社員に対して言った。そして皆さん,それこそがこの再編成の背後にある本当の理由なのだ。

 今回の再編に関して別のことも考えた。Eric Rudder氏が同社の技術部門の長としてBill Gates氏に代わり,さらに恐らく未来のCEOになるための準備をさせられているのだろう。

 私はRudder氏について詳しく知らないが,このことだけは分かる。Rudder氏はGates氏のように,プレゼンテーションのスキルと,人々を興奮させるだけのカリスマ性に欠けている。Microsoftに真に必要なのはSteve Jobs氏のような人間だ。つまり,Appleのためにステージに登場して人々を魅了することで,その製品が大きく変わったように最近数年でAppleを一変させた人間なのだ。

 Microsoftには現実としてSteve Jobs氏のような人物がいない。何人かはBallmer氏なら比較になると言うかもしれない。私の意見だが,同社は過去数年間Jobs氏の動きをけん制しようとしてきた。しかしBallmer氏は全く意味のない騒音を上げるだけで,Jobs氏は雄弁さとスタイルを備えている。私が知っている,この条件に合うMicrosoftで唯一の人間はHillel Cooperman氏だ。私の忠告としては,戦略を伝えるためには観衆の真正面に真に革新的で創造的な人物を指し向けることと,その人の黒幕にビジネスのできる連中を置くことだ。単調に話すだけの企業経営者はインスピレーションや興味を覚えさせることはない。