今回の説明会は,東京でJCPのExecutive Committeeが開催されたことに伴って行われたもの。説明会にはKluyt氏議長のほか,Executive Committeeの3人のメンバー(フィンランドNokiaのPentti Savolainen氏,米BEA SystemsのEdward Cobb氏,独SAPのMichael Bechauf氏)も参加した。
Javaの仕様は以前は開発元であるSunがすべて決定していたが,現在ではJCPの中で民主的なプロセスを経て決定されている。新しいJava技術の仕様はJCPのメンバーなら誰でも提案できる。JCPのExecutive Committeeが提案を検討し,認めればJSR番号を割り振る。その後,仕様策定者(Spec Lead)を決め,専門家を集めてExpert Groupを構成する。ここでの議論や公開した仕様案(ドラフト)に対する一般からのフィードバックを反映し,最終的な仕様を策定。さらに,仕様に基づく参照実装とテスト・ツール(第三者が実装を提供した場合)を作成し,ようやくJavaの正式な仕様として公開する。
「私たちは,これまでに三つのバージョンのデスクトップ向け仕様(J2SE/Java SE),三つのバージョンのエンタープライズ向け仕様(J2EE/Java EE),二つのバージョンの組み込み向け仕様(J2ME/Java ME)を決めた。これに対し,米Microsoftはこの間,これほどのバージョン(の .NET仕様)は出せていない」(Kluyt議長)。
質疑応答では,現在のJCPの枠組みが本当にうまく機能しているかどうかという点に質問が集中した。JCPで策定されたEJB 2.0(JSR 19)に批判が集まり,近く登場予定の最新版であるEJB 3.0(JSR 220)で仕様が大きく変わったといった事実が背景にある(参考記事)。
「Sunが議長であることをどう思うか」という3人のメンバーへの質問に対しては,SAPのBechauf氏は「現在の(JCPの)状態は健全だと思う。これを維持するようにSunを見張るのが私の役目だ」と答えた。一方,BEAのCobb氏は「Sunの役割はいいと思う」,NokiaのSavolainen氏は「Sunがやってきたことには感謝している」と,いずれもSunの貢献を評価した。
「JCPよりEclipseの方が標準化のスピードが速いのではないか」という質問に対しては,Kluyt議長が「Eclipseはプロダクトとしては成功しているが,標準化が成功しているわけではない」と反論。SAPのBechauf氏は「3人のメンバーはEclipseのボードも兼務している。JCPとEclipseとの間の協調を進めるのが私たちの責務」とまとめた。
現在のExecutive Committeeが,エンタープライズ/デスクトップ向けと組み込み向けの二つに分かれている点については,「この体制を変える考えはないか」との質問が出た。これに対しKluyt議長は「JCPが設立された時点での技術の状況は,エンタープライズ/デスクトップと携帯電話でかなり異なっていた。(現在も)この体制は妥当だと思う」と答えた。NokiaのSavolainen氏は,現在のExecutive Committeeの体制を肯定したうえで「将来は体制を変えることを議論してもいいと思う」と語った。「携帯電話の性能はどんどん向上しており,あと1~2年でデスクトップと差はなくなるだろう。そうなれば,両者の間でAPIをある程度ハーモナイズするといったことを考えてもいい」(Savolainen氏)。