写真1●オープンソースカンファレンス 2005/fallの展示会場
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写真2●パネルディスカッション「学校へのLinuxPC導入実証実験」
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写真3●パネルディスカッション「日本のオープンソース」
写真3●パネルディスカッション「日本のオープンソース」
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写真4●LPIC特設試験
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写真5●NPO法人 新潟オープンソース協会
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写真6●SeasarファウンデーションのHTMLテンプレート「Maya」セミナー
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写真7●XOOPS Cubeプロジェクトチームによる「XOOPS Cube BOF」
写真7●XOOPS Cubeプロジェクトチームによる「XOOPS Cube BOF」
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写真8●OpenOffice.org日本ユーザー会による「OpenOffice.orgコミュニティミーティング」
写真8●OpenOffice.org日本ユーザー会による「OpenOffice.orgコミュニティミーティング」
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写真9●日本MySQLユーザ会と日本PostgreSQLユーザ会による「BOF: MySQL, PostgreSQL がっぷり四つ!ー明日はどっちだ」
写真9●日本MySQLユーザ会と日本PostgreSQLユーザ会による「BOF: MySQL, PostgreSQL がっぷり四つ!ー明日はどっちだ」
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写真10●横浜Linux Users Groupによる「出張カーネル読書会」
写真10●横浜Linux Users Groupによる「出張カーネル読書会」
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 オープンソース・コミュニティが合同で開催するイベント「オープンソースカンファレンス 2005/fall」が9月17日,開催された。30組以上のコミュニティが参加,昨年秋の「オープンソースカンファレンス 2004」の2倍となるOSC1000人以上の参加登録があった。

学校へのLinux導入の成果と課題

 カンファレンスでは50コマ以上のセミナーやBOFが行われた。パネルディスカッション「学校へのLinuxPC導入実証実験」では,経済産業省が独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)を通じて実施した学校へのLinuxPC導入実証実験(関連記事)について,当事者が登壇。聴衆には多くの多くの教育関係者も見られた。IPAの橋本明彦氏は「全国の17校に3700名以上の生徒が参加し,約80%の教師が「十分満足」または「ほぼ満足」と回答した」と報告した。

 司会の日本OpenOffice.orgユーザ会 可知豊氏からの「なぜオープンソースなのか」という問いに対し,全国9校に307台のLinux専用パソコンを導入する実験(関連記事)を担当した三菱総合研究所の飯尾淳氏は,「実験で課題となったクライアント管理の問題を解決するために,ディスクの内容を一斉に更新できるクライアント管理ツール『クラスルームPC管理ソフトウエア』を実験のために開発し,オープンソース・ソフトウエアとして公開したが,オープンソースだからこういった仕組みの開発が容易だった」と述べた。

 アルファシステムズの千葉大作氏は,CD起動のLinux「KNOPPIX」を8校に導入し,673名が利用する実験を担当。CD起動のため,クライアントのシステムを常に同じ状態に保つことができるが,ライセンスのコスト,改変の容易さからオープンソースであったからできた」と述べた。

 ただし課題もある。特に切実なものは「実社会ではExcelが利用されており,OpenOffice.orgを学んでも就職に役立たない」という生徒の不満だ。商業高校ではこういった意見が多く,東海商業高校では,半数が「もう使いたくない」と回答している。

 この点については,経産省では今年度,自治体を対象にオープンソース・デスクトップ導入実験を実施するため「自治体が使用すれば,OpenOffice.orgの経験があることが評価されるようになるのではないか」という意見が出された。また近く経産省と総務省が発表する予定の,特定の製品に依存しない政府調達ガイドライン(関連記事)が改善に寄与するとの見方も示された。

日本の現状への危機感と希望

 パネルディスカッション「日本のオープンソース」では,日本のオープンソース・ソフトウエアの現状について,危機感に満ちた議論が展開された。ミラクル・リナックスの吉岡弘隆氏は「日本では,国際競争力のある大規模なソフトウエアを開発するようなプロジェクトは90年代に壊滅状態になってしまった。エンジニアを鍛える場が失われてしまった以上,特殊な少数を除けば,日本では国際競争力のあるエンジニアが育つわけがない」と指摘。OpenOffice.orgやFreeBSDのコミッタである中田真秀氏は「ヨーロッパと米国のオープンソースのエンジニアは毎日コミュニケーションしていて,IRC(チャット)で重要なことがどんどん決まっている。日本からはほとんど意思決定に入っていけない」と,国際的な開発の現場で感じた危機感を話した。

 中国やインドなどアジア各国の力に対する評価も高い。グッディの前田青也氏は「9月にスリランカで開催されたアジアOSSシンポジウムに出席したが,アジア各国は動きが早い。日本は産業構造が大きいせいか,動きが遅い」と指摘。日中韓官民でのオープンソース連携や標準化に携わっているNTTデータの三浦広志氏は「中国の潜在力はすさまじく,攻め込まれたらひとたまりもない」と,アジアの実力を表現した。

 また「使う側と作る側に2極化してしまっている」(小江戸らぐでLinuxディストリビューション「slax」の日本語化などを行っているIPAの羽鳥健太郎氏),「毎年コミュニティのメンバーの平均年齢が1歳~1.5歳づつ上がっていると言われる」(日本PostgreSQLユーザ会,NTTデータの永安悟史氏)という意見もあった。

 しかし希望はある。「オープンソース・ソフトウエアのプロジェクトは,意志と情熱があれば,参加できるかもしれない。コミュニケーションは一種のスキル。訓練すれば修得できる。オープンソースという新しいゲームのルールをエンジョイしたい」(吉岡氏)。「PostgreSQL 8.0には,日本人のパッチがたくさん入っている。Win32版のレプリケーションは日本人が作った。一部の人間だけで意思決定を行うような状況は長続きしない。議論の可能性を信じたい」(永安氏)。「人材が不足しているぶん,熱意を訴えれば,チャンスが与えられる可能性は大きい」(中田氏)

 日本にもオリジナリティはある。「数学,化学の世界では,世界に通用する成果が生まれている。FreBSDのコアメンバーにも栗山さんという日本人がいる」(中田氏)。大学の中にソフトウエアはあるが,それがなかなか公開されない。「研究者の価値を論文ではなく,社会への貢献で計るべき。論文に比べ,gccが,Linuxがどれだけインパクトを与えたか。大学の外にいる人間が言わなければいけない」(吉岡氏)。

 戦略としては「商用ソフトウエアは価格を維持するために,使わない機能が増えて,重くなっている。そういう戦略を追いかけても疲弊するだけ。軽快感を狙うべき」(羽鳥氏)。「プロジェクトはもっとブランチして,試行錯誤するなかでよいものを作っていっていい。XOOPSからブランチしたXOOPS Cubeの決断には拍手を送りたい」(司会のOSC実行委員長,びぎねっと 宮原徹氏)という意見もあった。またグッディの前田氏は「当社では,就業時間中にオープンソース・ソフトウエアを開発できるようにしているが,大手企業もそうやってエンジニアを育成してほしい」と述べた。

WindowsユーザーにもPHPとPoatgreSQL開発環境を

 またLPI-Japanは,通常パソコンで実施している試験を,ペーパーテストで行う特設試験を実施した。LPICの試験問題が作られるプロセスを紹介するセミナーも開催した。

 展示には,Mailman,日本PostgreSQLユーザ会,OpenOffice.org日本ユーザー会,SUSUBOX,東京 Inferno/Plan 9 ユーザーズ グループ,Mona OS,日本NetBSDユーザーグループ,日本Zope ユーザ会 + Plone 研究会,東大Finkチーム,日本viユーザ会,yellowTAB GmbH,GentooJP,Fedora JP Project,Shared Questionnaire System Development Project(SQS),NPO法人 新潟オープンソース協会,WideStudio/MWT プロジェクト,日本MySQLユーザ会,KNOPPIX日本語版@産総研,knoppix-edu.org,Momonga Project ,小江戸らぐ,HP OSLO/JBoss チーム,もじら組,XOOPS Cubeプロジェクトチーム,OSASK,PureBasic,日本BeOSネットワーク,NPO法人 オープンソースソフトウェア協会,LPI-Japanが出展。

 目を引いたのは地域のコミュニティだ。NPO法人 新潟オープンソース協会は「Niigata Linux」を出展した。Niigata Linuxは,Linuxをインストールするだけでなく,CDをWindowsパソコンに挿入すると,Windows上にPHPとPostgreSQLがインストールされるというもの。WindowsユーザーがPHPとPoatgreSQLのアプリケーションを容易に開発できるようにと作成した。また小江戸らぐは,最古のLinuxディストリビューションSlackwareの流れを汲む「slax」の日本語版を作成,展示していた。横浜Linux Users Groupは「出張カーネル読書会」と称し,Linuxのソースコードを読み解くセミナーを行った。

 Java関連セミナーも人気を集めた。Seasarファウンデーションによる「Seasar2」紹介セミナー,HTMLテンプレート「Maya」の紹介セミナーはいずれも満員。HP OSLO/JBoss チームによる「JBoss ハンズオントレーニング」も満員だった。

 セミナーだけでなく,ユーザー会の会合も行われた。XOOPS Cubeプロジェクトチームは「XOOPS Cube BOF」,OpenOffice.org日本ユーザー会は「OpenOffice.orgコミュニティミーティング」を開催,日本MySQLユーザ会と日本PostgreSQLユーザ会は合同で「BOF: MySQL, PostgreSQL がっぷり四つ!--明日はどっちだ」を行い,双方の特徴や課題などについて議論した。