近距離無線通信規格「ZigBee」の普及啓蒙を目的とした団体が,日本国内で本格的に活動を開始した。ルネサス テクノロジや沖電気工業など8社が2005年9月20日に,「ZigBee SIGジャパン」の正式な発足を表明したもの。「国際的なZigBeeの標準化団体であるZigBee Allianceに対して,日本から新たな仕様を提案したい」(理事長を務めるルネサス テクノロジ 事業戦略統括部 ネットワークプロジェクトの坪井務担当部長)と,今後のZigBeeに対して日本の影響力を強める役割を果たしそうだ。

 ZigBeeは,省電力を特徴とした無線通信規格。家電を遠隔制御するリモコンや,小型のセンサーからネットワーク経由で情報を収集し,ビルの設備制御や環境測定などに利用するといった適用分野が考えられている。2004年末に仕様が確定し,対応モジュールが各社から出ている。今回ZigBee SIGジャパンに参加したのは,日本国内でZigBeeに早くから取り組んできた8社。Chipcon ASジャパン,村田製作所,沖電気工業,NECエンジニアリング,ルネサス テクノロジ,OTSL,新光電気工業,フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンである。これ以外にも参加を検討中の企業は多数あり,「3カ月以内には15社程度に増えるだろう」(坪井氏)。ZigBee Allianceにおいて中心的な役割を担っている三菱電機もその中に含まれている。

 ZigBee SIGジャパンが予定する活動の一つが,ZigBeeを用いて構築するアプリケーションのインタフェース仕様(プロファイル)などをZigBee Allianceに対して提案していくこと。「ZigBee Allianceでの議論を待つのでなく,むしろ先取りして日本側から提案を出していきたい。日本の実情をZigBee Allianceに積極的に知らせ,日本発のプロファイルを標準化したい」(坪井氏)。現在ZigBee Allianceで本格的に議論されているのは,照明や空調の制御のようなリモコンを用途としたプロファイルのみ。これからは,多数のデバイスやセンサーがネットワーク経由で情報をやり取りする,いわゆるセンサー・ネットワークを想定したプロファイルなども提案していきたいという。例えば「一つひとつのデバイスに固有のアドレスを持たせる,IPv6のためのプロファイルなどを提案したい。日本は世界的に見てもIPv6の研究開発が進んでおり,詳しい技術者が多い。こうした強みを生かせると考えている。既にZigBee Allianceに対する働きかけを始めており,感触も良い」(坪井氏)。このような仕様の提案以外にも,日本のユーザーに対する技術教育,ZigBeeに関する出版活動や法令の調査研究などを予定している。

 発足時の参加企業はZigBeeモジュールなどのベンダーが多いが,今後はユーザー企業にも参加を呼びかけていく。「ビル・オートメーションや都市整備など,社会のインフラ構築にかかわる企業が興味を持っている。既に複数の企業から問い合わせを受けている」(坪井氏)。なお,ZigBee SIGジャパンにはZigBee Allianceに加入している企業でなければ参加できない。ZigBeeの仕様にはZigBee Alliaceの会員でなければアクセスできない情報があるためだ。ZigBee SIGジャパンではZigBeeの仕様にかかわる議論もなされるため,ZigBee Allianceの会員だけに入会を限っているという。