写真1●黒板シミュレータ「AKI 黒板 Ex」
写真1●黒板シミュレータ「AKI 黒板 Ex」
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写真2●AKI黒板の作者 神奈川県立多摩高校2年 秋山博紀氏
写真2●AKI黒板の作者 神奈川県立多摩高校2年 秋山博紀氏
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写真3●グラフ描画iアプリ「iPenGraph」
写真3●グラフ描画iアプリ「iPenGraph」
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写真4●「iPenGraph」を作った,沖縄県立球陽高等学校理数科3年「偏差値部]
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 高校生が作った「チョークの粉が落ちる黒板シミュレータ」や,「小数点演算ライブラリを自作した関数グラフ描画iアプリ」---経済産業省は9月14日,20歳以下を対象にした「U-20プログラミング・コンテスト」の,今年度の審査結果を発表した。学生が作成したとは思えない「優れた作品が集まった」(審査委員長の多摩美術大学メディアセンター所長 石田晴久氏)

 個人部門の最優秀賞は神奈川県立多摩高等学校普通科2年 秋山博紀氏が作成した「AKI 黒板 Ex」。マウスで操作で,チョークで書いたような線が描ける。描いている際に,「チョークから粉が落ちる,チョークがぶつかる音が出る,黒板消しで拭いた跡がうっすらと白くなる,などリアルさにこだわった」(秋山氏)ことと,それを実現したプログラミング技術が高く評価された。

 団体部門の最優秀賞に選ばれたのは,沖縄県立球陽高等学校理数科3年石田智也氏,赤嶺一樹氏,比嘉慎吾氏ら「偏差値部」が作成した「iPenGraph」。高校の数学で学習するグラフの形を携帯電話で描画するiアプリである。iアプリはプログラムのサイズが制限されるため,工夫を重ね30Kバイトにおさえた。「またiアプリ用のJavaには小数点演算がないため,固定小数点演算ライブラリを実装した」(偏差値部)。数式入力用ソフトウエア・キーボードも実装した。

 個人部門では,函館ラ・サール高等学校2年の矢萩寛人氏が作成した「ソーシャルネットワークシステム LiFre L1」,岩手県立水沢高等学校2年の高橋平氏が作成したプログラム言語「Frontier」が優秀賞に選ばれた。

 「LiFre L1」は,招待機能や日記,グループ機能,商用のソーシャル・ネットワーキング・システム(SNS)に迫る機能を備えた大規模なシステム。2ちゃんねるのような掲示板機能も持ち,かつSNSの持つ“人のつながり”や,友人評価機能などにより,ユーザーの自発的な秩序の維持を図る。開発した矢萩氏は審査会のプレゼンテーションで「信頼のおける安全なネットワークを作り,実社会との融合を目指したい」(矢萩氏)という大きな夢を語った。

 「Frontier」は,オブジェクト指向プログラミング言語。「プログラミングは難しくないことを友人に示したかった」(高橋氏)。未完成な部分も残されているが,高校生が言語開発というコンピュータ・サイエンスの根本的なテーマにチャレンジしたことが評価された。

 団体部門の優秀賞は,函館大学商学部1年生と2年生による「函館大学IT専攻塾」が開発した「バス参る」。GPS携帯電話を使い,路線バスの到着予定時刻を知らせるシステムである。バスにGPS携帯を載せて位置を取得,ユーザーはインターネットでサーバーにアクセスして,バスの到着予定時刻と現在位置を調べることができる。実用性が極めて高いことが,高得点につながった。

 このほか個人部門では,岐阜大学工学部応用情報学科2年 橋本賢治氏が開発したパズル・ゲーム「Duobubble」,千葉県立国府台高等学校普通科3年 中野裕樹氏が開発したベイズ・フィルタによるスパム・メール判定ソフト「Mail Guardian Neo」,名古屋情報メディア専門学校 ITスペシャリスト学科ネットワークエンジニアコース1年の望月岳氏が開発した,授業の内容に関する情報を生徒同士で共有するためのグループウエア「Review Note」が入賞した。

 団体部門では,学校法人新潟総合学院 新潟コンピュータ専門学校 ゲームシステム科2年の「カラフリア製作委員会」によるパズル風アクション・ゲーム「カラフリア」,新潟コンピュータ専門学校 ゲームシステム科3年のチーム「OPEN HEART」によるアクション・ゲーム「ぶろぐ ~Block Walking~」,都城工業高等専門学校の1年生から4年生までのチーム「Security Hole」によるメモリー常駐型自動バックアップ・ツール「RAIDEON」が入賞した。

 U-20プログラミング・コンテストは,経産省,財団法人日本情報処理開発協会(JIPDEC),情報化月間推進会議が主催しているコンテスト。一昨年まで「全国高校生・専門学校生プログラミング・コンテスト」として実施してきたが,昨年から「U-20プログラミング・コンテスト」として20歳以下であれば誰でも応募できるようになった。

 また今年度から,入選作品に対しフリー・ソフトウエアまたはオープンソース・ソフトウエアとして公開することを奨励している。審査会ではネットワーク応用通信研究所のまつもとゆきひろ氏が講演し,応募者にプログラミングの楽しさ,オープンソース・ソフトウエアの楽しさを訴えた。ほかに独立行政法人 産業技術総合研究所の新部裕氏,ミラクル・リナックスの吉岡弘隆氏といったオープンソース・ソフトウエア開発者が審査委員に加わっており,ソフトウエアの公開に関する助言や支援を提供する。

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