新しい開発ツールの提供を発表する、米マイクロソフトのエリック・ラダー上級副社長
 米マイクロソフト9月14日、新しいデザインツールとして「Expression」シリーズを提供すると発表した。同社でツール/サーバー製品を担当するエリック・ラダー上級副社長が、米ロサンゼルスで開催中の開発者向け会議「PDC05」の基調講演で明らかにした。

 Expressionシリーズは、Webデザインなどの開発ツールで、次期OSである「Windows Vista」をターゲットにしたものだ。これらの新しいツールを用いることで、開発者やデザイナーは、アニメーションや3Dなどを利用した、豊かで便利な表現力を備えたWebサイトを簡単に構築できるという。マイクロソフトでは、今後は、ユーザーの使いやすさを追求するために、「ユーザーインタフェースのデザインを重視したアプリケーション開発が進む」と見ている。

 現在、Webデザインの分野では、アニメーションなどを多用してグラフィカルな表現が可能な米マクロメディアのコンテンツ作成ツール「Flash」の人気が高く、標準的に利用されている。これに、Expressionはシリーズで対抗していくものと考えられ、次世代Webデザイン構築の主導権争いという点でも、注目度は高い。

新デザインツール「Expression」シリーズでは3製品が提供される予定 「Expression」シリーズの紹介サイト(http://www.microsoft.com/products/expression/

 Expressionシリーズで投入が予定されているのは、以下の3製品だ。デザイン作成のための「Acrylic Graphic Designer」(開発コード名。Acrylicはアクリルという意味)。アプリケーション開発用のユーザーインタフェース・デザインツール「Sparkle Interactive Designer」(開発コード名。Sparkleは火花という意味)。Webサイトのレイアウト/デザイン作成ツール「Quartz Web Designer」(開発コード名。Quartzは水晶という意味)である。

 敢えて言うなら、Acrylicはマクロメディアの「Fireworks」対抗、Sparkleは同「Flash」対抗、Quartzは同「Dreamweaver」対抗ということになるだろう。いずれのExpression製品も、正式名称や発売時期、価格は未定だ。

 もともとExpressionシリーズの製品は、マイクロソフトが2003年に買収した香港のクリーチャーハウスの製品をベースにしたもの。それをWindows Vistaが標準で搭載し、後にWindows XPや2000にも追加で提供される予定の次世代グラフィックス環境「Windows Presentation Foundation(WFP)」に対応させた。WFPで実現される、DirectX9をベースにしたアニメーション効果や3D表示などの機能を利用できるのが特徴だ。画像やビデオ、オーディオ、テキストを統合して扱うことも可能。ウインドウサイズが変更されるのに合わせてコンテンツの大きさを自動的に拡大縮小する、といった効果を付けることもできる。

 ちなみにWFPで実現されるユーザーインタフェースは、XAML(ザムル、Extensible Application Markup Language)という言語で記述されるが、AcrylicやSparkleで構築したインタフェースは自動的にXAMLで記述、保存される。

 Expressionシリーズについては、既に紹介サイトが構築されている(http://www.microsoft.com/products/expression/)。同サイトでは「Acrylic」をダウンロードして試用することも可能だ。