ソニー IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー ITカンパニー企画部4課プロダクトプロデューサー 楡井謙一氏
ソニー IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー ITカンパニー企画部4課プロダクトプロデューサー 楡井謙一氏
[画像のクリックで拡大表示]
ソニーイーエムシーエス VAIO設計センター VAIO設計部ソフト2課統括課長 井口昭氏
ソニーイーエムシーエス VAIO設計センター VAIO設計部ソフト2課統括課長 井口昭氏
[画像のクリックで拡大表示]

 各社からパソコンの秋冬モデルが発表され、どの機種も発売を間近に控える。中でも際だった特徴を持つのがソニーのノートパソコン「VAIO Type T」だ。LED液晶やカーボンファイバー強化のプラスチックなどを素材を採用し、従来モデルからさらに軽量化を図った。開発の狙いや採用した新技術などを企画を担当したITカンパニー 企画部4課 プロダクトプロデューサー楡井謙一氏、開発を担当したVAIO設計センターVAIO設計部ソフト2課統括課長の井口昭氏、ITカンパニー企画部シニアプロダクトプロデューサーの露木順司氏に聞いた。
                     

■今回の「Type T」のコンセプトは?
(楡井)前回のType Tは、パソコン誌だけでなく女性誌などで取り上げられるなど、ビジネス的には非常に成功した。しかし一方で、デザインの優れたパソコンという一面だけをとらえた見方もあった。そのため今回の開発のコンセプトは「先進性」にこだわった。具体的には、薄くて軽くてかっこいい、という点だ。重さは1.25kgで、前回のモデルより150g軽くなった。厚さは最薄部で約21mm。従来より約4mm薄い。

■実現するためにどのような技術を取り入れたのか?
(楡井)大きな改良点はLED液晶ディスプレイ、きょう体につかったマルチレイヤーカーボンファイバー、そしてインスタントモードだ。これだけの最新技術を取り入れた機種は、X505以来といってよいだろう。

■LED液晶の特徴は?
(井口)まず一つは従来のような蛍光管を使った液晶ディスプレイに比べ軽量化できること。前モデルの液晶サイズは10.6インチで今回は11.1インチだが、およそ60g軽量化できた。さらに薄さも約4.5mmと従来の約半分になっている。

(楡井)さらに全社的にハイビジョンへの移行を進めている中、ノートパソコンでもハイビジョンの映像をそのままの比率で映したかった。今回の11.1インチ液晶ディスプレイは、1366×768ドットで16:9という比率。16:9の液晶ディスプレイはノートパソコンとしては初めてとなる。今後は横長の液晶ディスプレイが増えていくだろう。

■薄くなったことで強度は十分なのか?
(井口)従来のように液晶の背面に部品を配置する必要がなく、背面をフラットに設計できた。そのため圧力が集中しにくく割れにくい。具体的には前モデルに比べて2.3倍の強度を実現できている。さらに蛍光管を使わないので、部材に水銀を利用していない初めてのモデルとなる。廃棄する場合を考えると大きなメリットがある。

■キーボードの使いやすさは変わったか?
(井口)デザインを変えたことで大きく見えるが横幅は変わらない。ただ前後のピッチが広がり打ちやすくなっている。ストロークも約1.7mmで前モデルと変わらない。ただパームレストはやや小さくなっている。

■AV機能で新しい機能は?
(楡井)インスタント機能だ。専用のボタンを設けておりWindowsを起動しなくても、DVDを観たり、写真画像を表示できる。電源を入れるとすぐに起動するので使いやすいはずだ。またDVD/CD用の取り出しボタンを設けており、ノート用DVDにありがちな小さいイジェクトボタンを押す必要はない。

(井口)取り出しボタンについては、設計面からの工夫もある。少しでもバッテリー駆動時間を伸ばすために、ドライブが入っていないと電源を切る設計にした。その状態ではDVD/CDドライブの取り出しボタンを押しても動かない。専用のボタンを付けたのは操作の面からも必要なものだった。実際に電源を入れたままだと、おそらく30分程度はバッテリー駆動時間が短くなったのではないか。Pentium Mを搭載したモデルなら、最大9時間のバッテリー駆動が可能だ。

■きょう体にカーボンを使っているが?
(楡井)これも軽量化に貢献している。今回使用したマルチレイヤーカーボンは、まだ製造できるメーカーも少なく価格も高いが、今回あえて使用した。

■ソニーのノートパソコンとしては初めてSDカードスロットを設けたが?
(露木)パソコンの世界はいろんな規格が存在する。それを無視していくことはできない。Type Tでは、外出先で写真を見たいというユーザーの要望も多かった。それらを考慮してSDカードスロットを採用した。

■価格は市販モデルで約22万円と、前モデルよりやや高くなっている。さらに直販モデルのほうがCPUなど仕様が上となっているが?
(楡井)価格は確かにやや高くなっている。しかし、それだけの機能やデザインは実現できていると思う。

(露木)直販モデルを購入するユーザーは、市販モデルよりも処理速度の速いCPUや大容量のメモリー、HDDを購入する傾向がある。直販モデルの方が仕様が高いのはそのためだ。

 製品の細かいレビューについては、日経パソコンの9月26日号かデジタルARENAの記事(http://arena.nikkeibp.co.jp/rev/pc/20050831/113312/)をご覧下さい。