Excelに代表される帳票ソフトが持つ使い勝手で、現場の担当者がタブレットやスマートフォンからビッグデータを手軽に扱える──。こんな機能を備えた「新世代帳票」の利用が加速している。牽引するのは、超「Excel」ソフトとも呼ぶべき製品群だ。ヤマハや小岩井乳業をはじめ現場主導のデータ活用を支えるべく導入する企業が相次ぐ。ビッグデータ全社活用を狙った新世代帳票の実態に迫る。
(島田 優子)
|

ビッグデータ活用の“本命”
ヤマハやデンソー、小岩井乳業といった著名企業が、新世代帳票システムの構築に乗り出している。「帳票」と言っても紙の帳票や、帳票作成ソフトとして日本で最も普及しているExcelとはイメージが大きく異なる。
新世代帳票の目的は「現場の社員によるビッグデータ活用」。実体は、Excelと、データ分析・活用を支援するBI(ビジネスインテリジェンス)ソフトの良いところ取りをしたシステムだ。Excelの良さを受け継ぎつつ、Excelの限界を超えたビッグデータ活用を可能にする新世代帳票を、本特集では超「Excel」と呼ぶ。
超Excelソフトが相次ぎ登場
企業が新世代帳票システムの構築に相次ぎ着手したのは、その実現を支援する「超Excelソフト」の登場が後押ししているからだ。
超Excelソフトは、(1)データ集計・グラフ作成、(2)ビッグデータ処理、(3)帳票の共有、という三つの基本機能から成る(図)。使い勝手はExcelと同様で、表やグラフを手軽に作成できる。だが、その機能はビッグデータの活用を視野に入れたものだ。メモリー上でデータを処理するインメモリー技術を採用し、大量データ処理を高速化。数億件に及ぶデータを数秒から数分で処理できる。
しかもデータサイエンティストのような専門家でなく、製造や営業などの現場担当者自らが、こうした大量データを集計・加工できるのが特徴だ。例えば、販売実績データの軸を「地域別・年代別」から「営業担当者別・月別」に変更するといった作業をドラッグ・アンド・ドロップ操作でこなせる。多くがタブレットやスマートフォンでの利用も想定している。
超Excelソフトは「データディスカバリー」「データビジュアライゼーション」「セルフサービスBI」などとも呼ばれる。海外製品を中心に続々と増えており、現在は主なもので8製品ある。
2013年5月には、米国で著名な「Tableau(タブロー)」が日本での販売を開始。10月25日にはジャストシステムが新製品となる「Actionista!」を発売した。「ビッグデータブームの追い風で、企業からの需要は高い。消費者向けソフトを開発している経験と、後発の利を生かして現場の社員の使いやすさを徹底的に追求した」と、ジャストシステム エンタープライズ事業部開発部の足立禎秀マネージャ 開発責任者は話す。
社内データ活用の起爆剤に
超Excelソフトは、ビッグデータ活用の“本命”となる可能性が高い。企業が取り組んできたデータ活用の課題を解決できる公算が大きいからだ。
企業におけるデータ活用を牽引してきたのは、データウエアハウス(DWH)やBIだった。しかし、システム構築にコストがかかるだけでなく、保守に手間がかかり柔軟な対応が困難だった。
このため、企業のデータ活用の主役は、現場が最も使いやすいExcelに移っていった。DWHのデータをExcelにダウンロードして帳票を作成している企業は現在も少なくない。
ビッグデータを全社のビジネスに生かすためには、一部の専門家だけでなく、現場の担当者が扱えなければならない。そうなるとExcelに勝るツールはない。問題は、Excelは大量データを扱うためのツールではないことだ。扱えるデータ量に限界があるだけでなく、集計・加工に手間を要する。
そんな状況を打開するには、ExcelとBIの良さを併せ持つソフトが望ましい。超Excelソフトは、こうしたニーズを満たすべく生まれた製品だ。
帳票作成工数の削減も見込める。ヤマハは超Excelソフトの導入により、年間1000万円のコスト削減効果を得られた。
続きは日経コンピュータ12月12日号をお読み下さい。この号のご購入はバックナンバーをご利用ください。