17年ぶりの消費税率改定が刻一刻と近づいている。2014年4月1日に現在の5%から8%に、2015年10月1日には10%に引き上げられる見通しだ。情報システム部門は2段階の増税に加え、同時に施行される軽減税率や経過措置への対応が必須となる。「影響は軽微」「ベンダーに任せれば大丈夫」といった認識は大間違いだ。時間の猶予はない。税率改定の半年前の9月30日までに検討を完了できるかが勝負だ。

(島田 優子)


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 消費税率の改定方針が決まったのは2012年8月10日。この日成立した、消費増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法により、消費税率が2014年4月1日に5%から8%に、1年半後の2015年10月1日に8%から10%に改定される方針となった()。

図●消費税率改定の流れ<br>2014年4月と2015年10月の2回にわたり、消費税率が改定となる見通しだ
図●消費税率改定の流れ
2014年4月と2015年10月の2回にわたり、消費税率が改定となる見通しだ
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 方針決定を受け、国税庁は2013年3月25日に「経過措置」に関する処理を定めた文書を公表した。これは不動産やリース、サポートサービスといった長期間の契約についての消費税率の適用方法を決めたものだ。

 6月5日には、消費増税時の価格転嫁を円滑にする特別措置法(特措法)が成立した。「消費税還元セール」の禁止が話題を集めたが、見逃せないのは、価格の表示方法として「総額表示」に加えて「外税表示」が認められた点だ。

 消費税率の引き上げに関する最終決定は10月ごろとみられる。7月の参議院選挙の結果が、スケジュールに影響を及ぼす可能性もある。それでも、消費税率改定が実行される公算は極めて大きいとみるべきだろう。

システム対応状況は二極化

 消費税率が前回改定されたのは1997年。17年ぶりで、かつ1年半に2回という今回の消費税率改定が、企業の情報システムに前回以上の大きな影響を与えるのは必至だ。情報システム部門は価格表示といった自社の対応方針を踏まえて、財務会計や販売管理など消費税を扱う基幹系システムを中心に対応策を検討・実施する必要がある。

 日経コンピュータが主宰する「システム部長会」の会員に向けて6月初旬に緊急アンケートを実施したところ、消費税率改定への対応が二極化している現状が浮かび上がった。25%が「システムの修整に着手している」とする一方で、「まだ検討に着手していない」とする回答は26%に上った。

 アンケートの自由意見でも「以前から税改正への対応はシステム構築の基本要件として盛り込んでいたが、その後の改修により、要件を満たさなくなっている場合がある。このため、十分な再確認が必要だ」「経理部門主体で検討しており、今のところシステム部門は深く関わっていない」など様々な声があった。

 実際のところ、今回の消費税率改定は、システムにどれだけインパクトがあるのか。関係者の意見を総合すると、「システムの新規開発や大規模な改修が必要になるケースは少ないが、影響範囲は意外と広い。対応方針の検討は早期に始めるべき」となる。

 企業が検討を終えるべき当面のターゲットは9月30日と本誌はみる。関係者への取材を重ねた結果、「システムの修整やテストに少なくとも半年は見ておきたい」との意見が最も多かったからだ。消費税対応を無事に乗り切るためには、7月から9月までの3カ月間をどう生かすかが鍵を握る。


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