2013年5月24日、国民一人ひとりに固有の識別番号を割り当てて社会保障給付や納税を管理できるようにする「共通番号(マイナンバー)法」が可決された。
「社会保障・税の一体改革」のための情報基盤を構築し、国と地方自治体の行政システムを初めて連携させる。各個人が利用可能な制度をプッシュ型で案内できるようにするなど、行政サービスの質は確実に変わる。将来的な民間利用への期待も高まる。
マイナンバー改革で何が変わるのか、新しい情報基盤で個人情報は適切に扱われるのか。期待と不安が相半ばする改革の実像を徹底解説する。

(玄 忠雄)

◆改革のカギは情報連携
◆目指すはプッシュ型行政
◆国・地方にIT調達の試練
◆民間利用の実現に向けた課題


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改革のカギは情報連携

 国民一人ひとりに割り当てる固有の識別番号によって、社会保障や納税を管理できるようにする「共通番号(マイナンバー)制度」がいよいよ始動する()。政府は、この制度で行政サービスの利便性が向上するほか、公平・公正な税・社会保障負担の実現に不可欠だと訴えている。

図●マイナンバー制度導入のスケジュール<br>番号を利用する行政機関は、業務の見直しからシステム改修まで実質的に2~3年しかない。早ければ2019年中にも民間活用や官民の情報連携が始まる
図●マイナンバー制度導入のスケジュール
番号を利用する行政機関は、業務の見直しからシステム改修まで実質的に2~3年しかない。早ければ2019年中にも民間活用や官民の情報連携が始まる
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 ただし、長年にわたる議論を経て法案が成立した今も制度への賛否が交錯しており、一部では誤解に基づいた批判もある。同制度を支えるシステムを正しく理解するためにも、まずは制度の概要と基本的な考え方を整理する。

「一元管理」はしない

 マイナンバー制度が始まると、国民一人ひとりに対し、原則として一生不変の「個人番号」が割り振られる。2016年1月以降、納税申告や年金、国民健康保険などの手続きには必ずこの個人番号が必要になる。基礎年金番号や国民健康保険の被保険者番号などに代えて利用するものだ。割り当てを受けるのは日本に住民票を持つ全ての居住民で、永住資格を持つ外国人などを含む。

 個人番号は2015年秋に、市町村が通知カードを住民に郵送して知らせる。希望者には身元証明の機能も兼ねたICカード型の個人番号カードを発行する。

 一部には誤解があるが、各省庁や自治体などで番号付きで管理している個人情報の全てを、政府が一カ所に集めたり、一括してひも付けたりすることはない。所得の情報は国税庁や地方税を徴収する地方自治体、年金記録は日本年金機構というように、これまで通り各行政機関が管理する。

 大きく変わるのは、国の行政機関や自治体が相互に、必要な個人情報を照会し合うことだ。この情報連携により、業務が効率化し、行政サービスの質が向上すると期待されている。例えば、個人の所得情報や世帯情報などを適切に活用すれば、申請可能な諸手当や制度などを、国や自治体が該当する個人に直接通知できるようになる。これまでは考えられなかったプッシュ型の行政サービスだ。


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