SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を社内で活用する企業が急増している。異なる拠点や社外で働く従業員同士が、対面と同じ感覚でやり取りできるようにして、密な情報交換・共有を可能にする。社内に新たな気づきやアイデアの土壌を生み出すのが狙いだ。成果を上げた先進事例を基に、SNS活用の最前線を探る。

(島田 優子)

◆SNSで顧客満足度を引き上げ
◆真の狙いは「知の創造」
◆活用に挑む先進企業の実態
◆導入効果を高める5カ条


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SNSで顧客満足度を引き上げ

 「いらっしゃいませ」。来客があると、入り口で太鼓を鳴らして出迎える。中に入ると、1万坪の日本庭園が広がる─―。都心から1時間で行ける鶴巻温泉の旅館「元湯陣屋」の光景だ。

 陣屋は創業1918年(大正7年)の老舗旅館。表向き、ITとは縁遠いように思える。しかし、れっきとした社内SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の先進ユーザーだ。

 チェックアウト後の客室を点検していた客室係が、雨漏りを発見したことがあった。客室係はすぐにタブレットを取り出し、角度を変えて何枚か雨漏りの箇所の写真を撮影。「雨漏りの修理を至急お願いします」というコメントを添えて、SNSに書き込んだ。

 書き込みを見たフロント係はすぐ修理を手配、同時に部屋の予約受付を停止した。こうした対応を素早く実行して、雨漏りした部屋が予約されることを防いだ。

 20の客室に加えて六つの宴会場・結婚式場を持つ陣屋では、従業員同士が頻繁にこのような形でやり取りしている。その中心にあるのがSNSだ。

 同社は2012年から、アルバイトを含む約80人がスマートフォンやタブレットを持ち、SNSを使って日常業務を進めている()。担当者の割り振りといった日常業務に関する情報を共有するほか、サービスを提供する際の気づきや改善提案などを議論する。

図●鶴巻温泉の旅館「元湯陣屋」のSNSによるコミュニケーション
図●鶴巻温泉の旅館「元湯陣屋」のSNSによるコミュニケーション
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 「今や我々の仕事には欠かせない。75歳の従業員も利用している」。陣屋の宮﨑富夫社長はSNSについて、こう話す。

刻々と変わる顧客情報を共有

 創業95年目の老舗旅館がSNSの導入に踏み切った主な狙いは、顧客満足度の引き上げだ。

 SNSを導入する以前は、顔を合わせたミーティングに加え、ホワイトボードに書き出す、印刷した紙を配布するといった方法で予約や顧客の情報を共有していた。

 問題は「紙に印刷した途端に情報の更新が止まってしまう」(宮﨑社長)ことだった。旅館に来る顧客の状況は、交通事情や天気などによって刻一刻と変わる。紙やホワイトボードでは、こうした変化に対応し、関係者に即座に伝えるのが難しい。接客担当者がホワイトボードに顧客の好みを書き込む前に、調理担当者が顧客の苦手な食材を使うことも起こり得る。

 SNSの導入により、「おもてなしの質が上がった」と宮﨑社長は話す。顔を合わせての顧客情報の共有といった通常業務にかかる時間が減り、「お客様に対応する時間が増えた」(同)からだ。

 SNSは自社開発のCRM(顧客関係管理)システム「陣屋コネクト」の一機能である。セールスフォース・ドットコムの「Force.com」上に構築し、「Salesforce Chatter」をSNSに利用している。顧客情報をSNSに反映するなど、業務と一体化して活用できる。


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