メリットは多いが、とにかく導入費用が高い──そんな「仮想デスクトップ」に価格破壊を仕掛ける製品が登場してきた。目指すは“PC並み”の値ごろ感。サーバー環境の構築、端末の選択が「仮想デスクトップの値段」を決める。先行企業は、ソフトやハードを選び抜き、サイジングに知恵を絞る。仮想デスクトップの費用と効果を探った。

(森山 徹)


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 デスクトップ環境を仮想化し、サーバー側で一元管理する「仮想デスクトップ」。運用負荷軽減やセキュリティ強化、BCP(事業継続計画)対策など、そのメリットが広く知れわたってきた。豊島区が「仮想デスクトップでWindows XPと7を併用している」(政策経営部 情報管理課の黒田正智氏)など、2014年4月の「Windows XP SP3」のサポート切れも導入を後押しする。

 数多くのメリットがある仮想デスクトップだが、導入費用の高さに二の足を踏むユーザーは少なくない。IDCジャパンは、一般的なPCから、シンクライアント端末を含む仮想デスクトップ環境へ移行した場合の投資額と投資対効果(ROI)を試算。仮想デスクトップを3年間利用する条件で、初期投資額は26万4709円、年次費用は5万2073円だ。「利用者や管理者の生産性向上、企業収益への貢献度などで得られる回収額をNPV(正味現在価値)で算出。それを投資額で割ったROIは315.1%になる」(IDC Japan シニアマーケットアナリストの渋谷寛氏)。

 高いROIが見込めるにもかかわらず、「初期投資が重荷」とベンダーは口をそろえる。しかし、ここにきて導入費用を抑えられる製品やサービスが登場してきた。

導入費用を“PC並み”に

 2012年7月に仮想デスクトップに移行した、とぴあ浜松農業協同組合(JAとぴあ浜松)の目標は、“PC並み”の費用に抑えることだった()。「従来のPCは、導入費と5年間の保守費で1台30万円程度だった。これを超えないように検討した」(とぴあ浜松農業協同組合 総合企画部 情報管理課の山崎昌則氏)。IDCの試算を単純に5年間に延ばすと、52万5074円かかるところだ。

図●とぴあ浜松農業協同組合の仮想デスクトップ
図●とぴあ浜松農業協同組合の仮想デスクトップ
利用するソフト、ハード構成などを工夫し、構築・運用コストを抑えた
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 30万円以下という目標を達成できた一因が、米バーチャルブリッジズの仮想デスクトップソフト「VERDE」の採用だ。販売代理店であるオリゾンシステムズ ITサービス統括1部の柏木顕氏は「仮想化機能にLinux KVMを使うなど、オープンソースソフト(OSS)を多用することで低価格を実現している」と説明する。

 VERDEの価格は1ユーザー当たり1万5000円。他製品は、例えば「VMware View、Premier Edition」が2万6000円(パートナーによる実勢価格)、「Citrix XenDesktop Enterprise Edition」が3万2000円(同)だ。2012年10月にVERDEの取り扱いを開始した日立ソリューションズによれば、1000ユーザー時の参考価格は625万円から。1ユーザー当たり6250円の計算になる。

 コスト抑制の秘訣は、安価な仮想化ソフトの採用にとどまらない。JAとぴあ浜松は、1サーバー当たり150ユーザーという高い“集約率”や、サーバーOS採用によるライセンス費用削減などを実現した。仮想デスクトップは、工夫次第で導入費用を抑えられる。


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