スマートフォンの急速な普及が、企業に新たな競争軸をもたらしている。オンライン・ツー・オフラインを意味する「O2O」だ。スマホを活用することで、実店舗にネットの顧客を誘導することが容易になり、マーケティング手法も進化する。新たなビジネスチャンスを開拓する先進企業を追った。

(小笠原 啓)


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 スマートフォンを持って店を訪れるだけで、30円相当のポイントがもらえる──。こんなサービスを、ビックカメラや丸井、大丸松坂屋百貨店など大手小売事業者が相次いで導入している。ITベンチャーのスポットライトが運営する「スマポ」だ()。

図●スマートフォンの位置情報サービスを活用し、来店を促す「スマポ」<br>ビックカメラや大丸松坂屋百貨店、丸井などが相次ぎ導入した共通ポイントサービス
図●スマートフォンの位置情報サービスを活用し、来店を促す「スマポ」
ビックカメラや大丸松坂屋百貨店、丸井などが相次ぎ導入した共通ポイントサービス
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 スマポの特徴は、「店舗内の特定場所に、顧客を誘導できることだ」とスポットライトの柴田陽社長は指摘する。チラシやテレビCMを使って集客する手法では、顧客を店舗の入口までしか誘導できない。しかしスマポを使えば、例えば「7階のセール会場」など、ピンポイントの売場に顧客を導くことができる。

GPSとマイクを活用

 スマポの仕組みはこうだ。利用者がアプリを起動すると、スマホのGPS(全地球測位システム)が現在地を特定し、画面上に近隣の加盟店が表示される。利用者がアプリの指示に従い店内の特定場所を訪れて「チェックイン」操作をするとポイントが付与される。

 その際に使うのが、スポットライトが店舗に提供する超音波発信器だ。スマポのアプリを起動した状態で利用者が発信器に近づくと、スマホの音声マイクが超音波を検知し、チェックイン場所を通知する。「超音波の出力を制御することで、信号の到達範囲を限定できる。半径5メートル程度に限定すれば、ショッピングモールのテナントなど、隣り合った店舗が個別のクーポンを配信することができるようになる」と柴田社長は説明する。

新たな顧客に出会える

 発信器は名刺サイズで、電源さえあればどこにでも設置できる。GPSを利用できない屋内でも、販促を強化したい商品の売場に顧客を誘導することが可能になる。

 例えばビックカメラ有楽町店では、1階の携帯電話売場や4階のPC周辺機器売場など複数の場所に発信器を設置している。「商品を購入する目的がなくても、繰り返し来店してもらえる」(ビックカメラ)ため、売場作りを工夫すれば、衝動買いを誘発できるという狙いもある。

 スマポのポイントは、各加盟店の独自ポイントや商品券などに交換できる。その過程で、スマポのIDと加盟店のポイントプログラムIDを連動させる。そうすることで、スマポが蓄積する行動履歴と、各加盟店のPOS(販売時点情報管理)データを組み合わせて分析できるようになり、売場の改善につなげられる。

 さらにスマポの利用者は、ポイントを効率的に取得することを目的に、近隣の店舗を回遊する傾向が強い。これにより大丸松坂屋百貨店は、「スマホをよく利用する若者など、百貨店が取り切れていない顧客の開拓につながる」(広報)と期待する。通常では出会えなかった顧客に、スマポを使えばリーチできる可能性が高まる。


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