コンシューマー(消費者)向けITの考え方を企業ITに生かす「コンシューマライゼーション」が、日々の業務を変えつつある。社員の生産性や仕事への満足度を高める手段として、これまでにない成果を上げ始めた。

(浅川 直輝)


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 2011年10月、タイは史上空前の洪水に見舞われていた。首都バンコクの中心部も冠水し、市民は不便な生活を強いられた。バンコクに本社を持つ楽天のタイ子会社、タラッド ドット コムの社員も洪水の被害にさらされていた。

 そんな折、楽天グループが利用する企業向けSNS(ソーシャル・ネットワークキング・サービス)である「Yammer」に、楽天グループから続々と応援の写真が投稿された。日本だけでなく、米国、ドイツ、フランス、世界各国の楽天グループ企業から応援の写真が寄せられる。世界中からの応援に心を動かされたタラッドの社員は、励ましのメッセージに感謝する写真を投稿した(写真)。

写真●Facebookに似た「Yammer」で国内外グループ企業の結束を高める
写真●Facebookに似た「Yammer」で国内外グループ企業の結束を高める
洪水に見舞われたタイ子会社に日本の楽天グループが応援の写真を送る

 Yammerは米ヤマーが運営するSNSで、コンシューマー(消費者)向けソーシャルメディアの「Facebook」や「Twitter」とよく似た機能を持つ。テキストに加え写真や動画を投稿し、互いに共有できる。社員全体にメッセージを発信できるほか、社員同士でフォロー、フォロワーの関係になれる。

 楽天がYammerを正式に採用したのは2011年3月のことだ。2010年夏頃から社内の有志がYammerを活用していたが、3月11日の東日本大震災を機に、在宅時にも社員の勤怠管理ができる仕組みとして正式に導入。現在では海外子会社を含め、楽天グループ約7000人が有料アカウントを持ち、M&A(合併・買収)で拡大した楽天グループを束ねている。

Kinectで脳外科手術を支援

 東京女子医科大学のある手術施設には、家庭用ゲーム機「Xbox 360」の周辺機器である「Kinect」が設置されている。摘出する脳腫瘍の位置や形状を特定するのに必要なMRI(磁気共鳴画像装置)の画像を、手を振る、手を回すといった動作だけで選択、閲覧できるようにするためだ。

 Kinectは、2次元の画像に加え奥行きの情報も取得できるセンサーを備える。Kinectは一般にはXbox 360の周辺機器として、体の動きに合わせて画面内のプレイヤーが動くような体感型ゲームに使う。東京女子医科大学 先端生命医科学研究所の吉光喜太郎特任助教はKinectをPCにつなぎ、ジェスチャーで医療画像ビューアーを操作できるアプリケーションを開発した。

 執刀医は常に術野で電気メスや吸引器を握っており、席を離れてPCを操作することはできない。感染を防ぐため、マウスなど他の機器に触れるのも可能な限り避ける必要がある。このため、手振りなどのジェスチャーを読み取れるKinectは、執刀医には最適なユーザーインタフェース(UI)だ。システムを開発した吉光氏は「1分1秒を争う手術の際に、スタッフに『この画像を出して』といちいち指示する余裕はない。Kinectを使えば、ストレスなく画像を選択できる」と語る。


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