システム基盤の技術者が、新規事業の企画プロジェクトを指揮する。業務のコンサルタントが、システムの設計を手伝う──。複数の専門スキルを持ちつつ、一人で何役もこなす「多能スペシャリスト」に活躍の場が広がっている。
 ITベンダーの技術者と営業担当者、ユーザー企業のシステム部員が、情報システムの分野で活躍するために必要な専門スキルは何か。本誌は「2012年版 いる資格、いらない資格」調査を実施し、その答えを探った。
 ユーザー企業189社のシステム部長、ITベンダー75社の人事担当者、そして1000人を超える技術者やシステム部員らの回答結果から、2012年にあなた自身が磨くべきスキルと、取得すべき資格を見つけ出そう。

(玄 忠雄)

◆一芸でなく多芸に秀でる
◆ITベンダー技術者 編●プロマネを軸に領域を広げよ
◆ITベンダー営業担当者 編●定番は「ITパスポート」
◆ユーザー企業システム部員 編●セキュリティと簿記に注目


【無料】サンプル版を差し上げます 本記事は日経コンピュータ12月8日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集」の全文をお読みいただける【無料】サンプル版を差し上げます。お申込みはこちらでお受けしています。 なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

 案件に応じて、いくつかの職種をこなせる。仕事のカバー範囲が広く、融通が利く──。こうした複数の専門スキルを持つ人材「多能スペシャリスト」を、積極的に育成する企業が相次いでいる。

 日本IBMは現在、アーキテクトやコンサルタントなど専門職の「多能化」に力を入れている。本職以外の専門スキルも習得した人材を、高く評価する人事制度を導入。また、異なる専門職との交流を促すために、専門職の情報交換の場となるSIG(スペシャル・インタレスト・グループ)を設け、一人の技術者を複数のグループに参画させている。

 様々な事業モデルを作れるクラウドコンピューティングが台頭してきたことで、「幅広い専門スキルがないと、状況に応じた提案や課題解決ができなくなった」と、日本IBMのクラウド&スマーターシティ事業ソリューション事業部の西村淳一部長は指摘する。同社が2011年1月に創設した「IBMクラウドマイスター制度」では、コンサルティングもできるITアーキテクトなど多能な人材6人を認定した。そのスキルを求め、様々なプロジェクトから声が掛かっているという。

 多能スペシャリストを求めるのは、ITベンダーだけではない。ユーザー企業でも多能なシステム部員を育成し始めた。例えばリクルートでは、Webサービスの企画からWebサイトの設計、開発までを一人で3カ月で完遂させる新人研修を行っている。「他人に頼らずすべてを自分で実践させることで、自律したIT人材が育つ」と、MIT Unitedプロジェクト推進部の河野彰博ゼネラルマネジャーは話す。

多能でなければ対応できない

 ITベンダーやユーザー企業が多能スペシャリストを求める背景には、システム開発・運用やシステム活用に求められるスピード感や仕事内容の変化がある(図1)。

図1●一人で複数の役割を担える「多能スペシャリスト」が必要になった主な理由
図1●一人で複数の役割を担える「多能スペシャリスト」が必要になった主な理由

 情報処理推進機構(IPA)のITスキル標準センター長などを歴任したヒューマンストラテジーの長田康久社長は、「経営とITを橋渡ししつつ、企画から実装までできる人材が求められている。上流や下流といった工程別に最適化した人材では、対応できなくなりつつある」と強調する。

 例えば、ビジネスにクラウドを活用するような案件では、基盤技術が分かっていないと上流工程ができない。システム構築の現場でも、アジャイル開発や短納期の仕事が増えている。「技術者が一人何役もこなさないと、顧客が求めるスピードについていけない」と、日本システムウエアの人事部人材戦略グループ長の本多實氏は指摘する。

求められている資格を見極める

 多能スペシャリストを目指す重要な手段が、複数の資格を取得することだ。資格を取得すれば客観的にスキルを証明できるし、自己確認もできる。「資格取得のための勉強を通じて、実践で得たノウハウや知識を整理できる利点もある」と、リクルートの河野ゼネラルマネジャーは資格を取得する意義を語る。

 もっとも、やみくもに資格をそろえる「資格コレクター」に陥っては意味がない。ITベンダーの技術者や営業担当者、ユーザー企業のシステム部員には、それぞれ異なるスキルが求められている。自分に求められているスキルを見極めることが肝心だ。本誌が実施した「2012年版 いる資格、いらない資格」調査の結果(図2)を基に、目指すべき資格を見つけ出そう。

図2●「2012年版 いる資格、いらない資格」調査結果
図2●「2012年版 いる資格、いらない資格」調査結果
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