震災の影響で景気の先行きは不透明である。だが、悲観することはない。2010年度の業績を分析したところ、ITサービス企業の多くはリーマン・ショックから立ち直り、確実に基礎体力を増していることが分かった。売上高の伸び率を示す「成長性」は1.5%で、2年ぶりにプラスに転換。「収益力」「生産性」も前年度より高まった。本誌が算出した業績ランキングから、ITサービス各社の成長の芽を探る。

(島田 優子)


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図●主なITサービス企業の2010年度の業績
図●主なITサービス企業の2010年度の業績

 ITサービス企業の成長の芽が見えてきた。調査対象企業140社のうち、2010年度決算が増収・営業増益(以下、増収増益)だったのは54社。決算期変更や情報非開示など特殊要因を除く136社に占める割合は39.7%だった()。2009年度調査(対象企業142社)では、増収増益を達成した企業は7.7%だった。

 調査対象各社の売上高は、平均で1.5%上昇、営業利益は31.3%も増えた。調査対象企業の売上高伸び率と営業利益伸び率をプロットした散布図を見ると、前年度に比べて各社の分布は全体的に右上に広がった。

増収企業が半数を超える

 ITサービス各社が再び成長軌道に戻り始めている状況は、売上高ランキングを見ると分かる。

 売上高の「伸び率」欄を見てほしい。前年度に比べて減少したことを意味する▲マークが激減した。売上高の上位30社でこのマークが付いたのは13社。前回調査では30社中27社で▲マークが付いていた。売上高を前年度と比較できる139社のうち、半数を超える73社が増収だった。

 売上高の伸び率を示す「成長性」の平均は1.5%で、2年ぶりにプラスに転じた。成長性トップはM&A(合併・買収)で売上高を倍増させたMinoriソリューションズである。データセンター運営などクラウド関連のITサービス企業も売上高を伸ばした。

 調査対象企業の売上高の分布や上位企業の顔ぶれは、前回調査と大きく変わらない。売上高1000億円を超えた企業は26社で、前年と同数である。

 売上高順位のトップは、1兆1619億円のNTTデータだ。海外のITサービス企業の買収などにより2010年度は増収を達成した。初めてトップ10入りしたのは、2010年10月に発足した日立ソリューションズだ。日立ソフトウェアエンジニアリングと日立システムアンドサービスの統合により、売上高が2500億円を超えた。

 売上高だけでなく、「収益力(売上高営業利益率)」や「生産性(従業員1人当たりの経常利益額)」も回復基調にある。収益力の全体平均は5.1%で前年度の4.9%から0.2ポイント改善した。生産性の全体平均は149万円で前回調査から8万円アップしている。

 収益力と生産性の両者でトップに立ったのがオービックだ。収益力は35.0%で12年連続1位、生産性は1002万円で前回調査から一つ順位を上げた。いずれも2位以下に圧倒的な差をつけた。上位企業の顔ぶれは前回調査と大きく変わっていない。「収益力」「生産性」のそれぞれのトップ10のうち7社は、前回調査でもトップ10入りしていた。

成長の芽を育てよう

 東日本大震災の影響で2011年度の景況は不透明ではある。「当面の間、国内IT投資の回復は見込めない」(NTTデータの山下徹社長)など、2010年度の決算発表会では経営トップの弱気な発言が目立った。

 しかし、2010年度決算だけを見る限り、ITサービス企業はリーマン・ショックから立ち直り、新たな成長に向かって進み始めていたことは明らかである。

 確かにITサービス市場の先行きは不透明だが、M&Aやクラウド事業の強化などを通じて、ITサービス企業は成長の芽をつかみつつある。


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