シンガポールと香港が、アジアにおけるクラウドコンピューティングの中心になりつつある。両都市は今、データセンターの建造ラッシュで、床面積が1万平方メートルを超える巨大施設が次々と開業している。その背景には、アジア中のIT投資を集めようという両政府の思惑がある。現地取材を基に、シンガポールと香港の野望を追った。

(中田 敦)


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 シンガポールと香港が、アジアにおけるクラウドコンピューティングの中心地「クラウドハブ」になりつつある――。すでに米アマゾン・ウェブ・サービシズや米セールスフォース・ドットコム、米マイクロソフトといった大手クラウドサービス事業者が、日本を含むアジア向けのサービスをシンガポールや香港のデータセンターから提供している()。

表●アジア地域のデータセンターから提供されている主なIaaS/PaaS
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表●アジア地域のデータセンターから提供されている主なIaaS/PaaS

 KDDIやNTTコミュニケーションズ、富士通といった日本のITベンダーも、シンガポールや香港のデータセンターの増強を進めている。ソニーやヤマハ発動機、日本通運といったユーザー企業も、自社内のクラウドハブにするために、アジア地域のデータセンターを両都市に集約している。

 IT調査会社である英オーバムのシニアアナリストであるクラウディオ・カステーリ氏は、データセンターとネットワークが両都市に集まる状況を、車輪の軸(ハブ)に例えてこう評する。「アジアにおける『クラウドハブ』は、シンガポールと香港だ」。

 日本はクラウドハブではない。「シンガポールと香港のデータセンターは、アジア全域がターゲットだ。一方、日本のそれは、国内向けにサービスを提供するためだけにある」と、ガートナージャパンの田崎堅志リサーチバイスプレジデントは説明する。

 それを象徴する例がある。富士通が2011年4月にアジア各国向けに提供するIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)「オンデマンド仮想システムサービス」だ。このサービスは、シンガポールのデータセンターから提供される。

 実はこのサービスは、アジア各国に先駆けて2010年10月から日本国内向けに提供している。データセンターは群馬県にある「館林システムセンター」を利用しているのだが、ここはあくまでも日本国内向け。アジア全域にサービスを提供するクラウドハブとして、富士通はシンガポールを選んだ。


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