マイクロソフトが必死でカイゼン活動を進めている。最新OSの「Windows 7」の開発に当たっては、かつてない規模で顧客の声を収集し、動作性能や互換性を見直した。樋口泰行社長の号令下、品質向上や産学連携といった地道な活動にも力を注ぐ。

(玉置 亮太)

◆供給者の論理から抜け出す
◆Vistaに学び「7」で挽回
◆信頼を得るため地道な活動


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 8割の企業が「Vista」ではなく「XP」を使っているという結果を受けて、マイクロソフトが最初に取り組んだのは、これまで以上に顧客と向き合うことだった。世界中で顧客の不満や改善要望を収集し、7の仕様を固めた。動作性能、互換性、生産性、管理性という基本を見直した。

 「お客様の声をとにかくたくさん聞いた。パソコンを使って何をしたいのか、何が不満なのか。そうした声を集め、開発に活かした」。9月24日にマイクロソフトが開いた、Windows 7の販売戦略説明会。一般消費者向け事業を統括する堂山昌司 副社長は、こう切り出した。

 同社がWindows 7開発方針の第一に挙げるのが、「お客様の声から学ぶ」こと。インターネット経由の意見収集や対面での聞き取りなどで、顧客の声を集めた。まずWindows Vistaの出荷後、全世界で200カ国、のべ1100万人が利用するパソコン600万台から、インターネット経由で使用状況レポートを自動収集。同じくインターネット経由で1600件の聞き取り調査を実施し、改善要望を集めた。Windows 7の仕様策定前には、計2600人の一般消費者、4000人のIT管理者に対面調査を実施した。いずれもVista開発時とは段違いに多い。

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OSの基礎を改善

 これらの意見収集活動を基に、同社は利用者の不満や要望の原因を分析し、利用状況を想定した90を超える「シナリオ」を作った。当たり前の手法だが、それを同社として過去最大規模で実施した。

 「41%のIT管理者が企業内にあるデータへ容易にアクセスしたいと望んでいることがわかった」。米マイクロソフトでWindowsの企業向けマーケティングを統括するリチャード・レイノルズ ゼネラル マネージャー(GM)は、特に多かった要望の例をこう語る。さらにデータの暗号化やセキュリティ確保については56%、利用者の使えるソフトを制御したいという要望が61%に上ったという。これら三つの要望を基に作ったシナリオが、「社内外を問わず必要なデータを容易に利用して生産性を上げることと、管理やセキュリティの両立」というもの。これを実現するために、どんな改善や新機能が必要かを詰めていった。

 たどり着いた結論は、「OSとしての基礎的な部分を改善する」(レイノルズGM)こと。(1)パソコンの動作性能にかかわる内部構造の改良、(2)互換性を保つ機能や仕組みの整備、(3)ノートパソコンによるモバイル利用を念頭に置いた機能強化、そして(4)セキュリティをはじめとする管理者向けの機能強化である。「IT管理者やエグゼクティブが重視する点と当社の開発優先順位は、ほぼ合致していた。これらの強化を通じて、企業にとって必須の課題であるコスト削減を支援する」(レイノルズGM)。


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