検索、オフィス・アプリケーション、サーバー上の開発実行環境、ついにクライアントOSまで、グーグルは続々と製品を登場させる。現地に飛び、米国本社の製品責任者を直接取材。製品群の“次の一手”を追った。
(玉置 亮太)
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Webブラウザをすべての基盤とする―。グーグルが掲げるクライアント戦略は、仕上げの段階に入りつつある。OSに加えて、既存プログラムをWebブラウザ上で動かす技術の開発にも着手した。

米カリフォルニア州マウンテンビューにある米グーグル本社。快晴の空の下、メインビルの入り口をくぐると、巨大なホワイトボードが視界に飛び込んできた(写真)。雑多な落書きが大半を占める中に、「Chrome OS」の文字が目を引く。7月にグーグルが開発を発表したばかりのパソコンOSだ。
4年前にグーグルが描いていた「マスタープラン」。Webブラウザ「Chrome」と一大ブームとなった小型軽量パソコン「ネットブック」を得て、今まさに花開こうとしているのか。それとも単なる落書きか。書き手の真意は不明だ。
しかしこの三つの製品名こそが、グーグルのクライアント戦略を象徴している。グーグルの次の一手を知るためには、そのクライアント戦略を理解する必要がある。
クライアント技術に傾倒
「WebブラウザとパソコンOSのデスクトップの差異を埋めることが、クライアント技術開発の狙いだ」。グーグルのエンジニアリングマネージャであるブラッドリー・チェン氏は、こう語る。
グーグルはここ最近、クライアント環境向けの技術開発に注力している。最もインパクトが大きいのは、今年末にソースコードをオープンソースとして公開するChrome OSだろう。「新世代のOS」「マイクロソフトの牙城を切り崩しにかかった」─。7月に同社が開発計画を発表するや、Chrome OSの話題は世界を駆け巡った。
Chrome OSの実体は、軽量のLinuxカーネル。名称のとおり同社のWebブラウザChromeと一体で動作する。Chrome OS自体はOSの中核モジュールであるカーネルであり、電源を入れると数秒でChromeブラウザを利用できる。「Chrome OSとChromeはソースコードの大半を共有する。GUIはWebブラウザであるChromeが担う。Chrome OSはWebブラウザを利用するために十分な機能と性能を持つOSとして開発する」(チェン マネージャ)。
グーグルが開発を進めているクライアント向け技術は、これだけにとどまらない。最も野心的な取り組みが「Native Client(NaCl)」。これはx86系プロセサのネイティブコード(マシン語)を、Webブラウザ上で実行するための技術だ。コードの実行環境(ライブラリ)とコンパイラを含んでおり、CやC++などでWebアプリケーションを開発すれば、ブラウザ上で直接実行できる。
研究プロジェクトにすぎなかったNaClは、ここにきて重要度を増してきた。グーグルはこの6月11日、研究開発プロジェクトだったNaClを、同社が推進する開発プラットフォームにすると発表。一般の開発者に向けて構成要素を徐々に公開し、ソースコードの改善やサンプルアプリケーション開発などを呼びかけていく。
「O3D(オースリーディー)」と呼ぶグラフィックス処理用APIの開発も進めている。WindowsのグラフィックスAPIであるDirectXのようにハードウエアの処理能力を使って、Webブラウザ上で三次元画像を使ったアプリケーションを開発できるようにする。
GearsはWebアプリケーションをオフライン化する技術。機能の制限はあるものの、デスクトップアプリケーションであるマイクロソフトの「Word」のように、グーグルの文書作成サービス「Docs」を非接続状態で利用可能にする。グーグルはGearsをChromeに標準搭載しているほか、オープンソース化して他のWebブラウザ向けにプラグインを提供している。
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