検索、オフィス・アプリケーション、サーバー上の開発実行環境、ついにクライアントOSまで、グーグルは続々と製品を登場させる。現地に飛び、米国本社の製品責任者を直接取材。製品群の“次の一手”を追った。

(玉置 亮太)

◆クライアント編 始めにブラウザありき
◆サーバー/ミドルウエア編 「万人の基盤」を目指す
◆アプリケーション編 昨日のやり方を捨てる


【無料】サンプル版を差し上げます 本記事は日経コンピュータ9月2日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集」の全文をお読みいただける【無料】サンプル版を差し上げます。お申込みはこちらでお受けしています。 なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

Webブラウザをすべての基盤とする―。グーグルが掲げるクライアント戦略は、仕上げの段階に入りつつある。OSに加えて、既存プログラムをWebブラウザ上で動かす技術の開発にも着手した。

写真●グーグル本社のメインビル入り口にあるホワイトボード
写真●グーグル本社のメインビル入り口にあるホワイトボード
雑然とした落書きの中に、「Google OSの基本計画」が描かれていた

 米カリフォルニア州マウンテンビューにある米グーグル本社。快晴の空の下、メインビルの入り口をくぐると、巨大なホワイトボードが視界に飛び込んできた(写真)。雑多な落書きが大半を占める中に、「Chrome OS」の文字が目を引く。7月にグーグルが開発を発表したばかりのパソコンOSだ。

 4年前にグーグルが描いていた「マスタープラン」。Webブラウザ「Chrome」と一大ブームとなった小型軽量パソコン「ネットブック」を得て、今まさに花開こうとしているのか。それとも単なる落書きか。書き手の真意は不明だ。

 しかしこの三つの製品名こそが、グーグルのクライアント戦略を象徴している。グーグルの次の一手を知るためには、そのクライアント戦略を理解する必要がある。

クライアント技術に傾倒

 「WebブラウザとパソコンOSのデスクトップの差異を埋めることが、クライアント技術開発の狙いだ」。グーグルのエンジニアリングマネージャであるブラッドリー・チェン氏は、こう語る。

 グーグルはここ最近、クライアント環境向けの技術開発に注力している。最もインパクトが大きいのは、今年末にソースコードをオープンソースとして公開するChrome OSだろう。「新世代のOS」「マイクロソフトの牙城を切り崩しにかかった」─。7月に同社が開発計画を発表するや、Chrome OSの話題は世界を駆け巡った。

 Chrome OSの実体は、軽量のLinuxカーネル。名称のとおり同社のWebブラウザChromeと一体で動作する。Chrome OS自体はOSの中核モジュールであるカーネルであり、電源を入れると数秒でChromeブラウザを利用できる。「Chrome OSとChromeはソースコードの大半を共有する。GUIはWebブラウザであるChromeが担う。Chrome OSはWebブラウザを利用するために十分な機能と性能を持つOSとして開発する」(チェン マネージャ)。

 グーグルが開発を進めているクライアント向け技術は、これだけにとどまらない。最も野心的な取り組みが「Native Client(NaCl)」。これはx86系プロセサのネイティブコード(マシン語)を、Webブラウザ上で実行するための技術だ。コードの実行環境(ライブラリ)とコンパイラを含んでおり、CやC++などでWebアプリケーションを開発すれば、ブラウザ上で直接実行できる。

 研究プロジェクトにすぎなかったNaClは、ここにきて重要度を増してきた。グーグルはこの6月11日、研究開発プロジェクトだったNaClを、同社が推進する開発プラットフォームにすると発表。一般の開発者に向けて構成要素を徐々に公開し、ソースコードの改善やサンプルアプリケーション開発などを呼びかけていく。

 「O3D(オースリーディー)」と呼ぶグラフィックス処理用APIの開発も進めている。WindowsのグラフィックスAPIであるDirectXのようにハードウエアの処理能力を使って、Webブラウザ上で三次元画像を使ったアプリケーションを開発できるようにする。

 GearsはWebアプリケーションをオフライン化する技術。機能の制限はあるものの、デスクトップアプリケーションであるマイクロソフトの「Word」のように、グーグルの文書作成サービス「Docs」を非接続状態で利用可能にする。グーグルはGearsをChromeに標準搭載しているほか、オープンソース化して他のWebブラウザ向けにプラグインを提供している。


続きは日経コンピュータ9月2日号をお読み下さい。この号のご購入はバックナンバーをご利用ください。