サーバーやストレージ、ネットワーク──アプリケーションを支えるプラットフォームが今、大きく変わりつつある。
 データウエアハウス専用機や分散メモリー、仮想化などを活用した新プラットフォームの姿はこれまでと大きく異なる。変化を迫るのは、情報の大爆発である。ケタ違いの大波を乗り越えようとコンピュータが進化していくのは必然だろう。
 性能や信頼性、そしてコスト。もう何一つ我慢しない“自在プラットフォーム”の誕生だ。どれほど経済が混迷しようと成長を続け後戻りしない──やはりコンピュータは面白い。プラットフォームの最前線を追った。

(吉田 洋平、中田 敦、玉置 亮太、森山 徹)

◆今、形を変えるコンピュータ
◆汎用から専用へ
◆機能の再配置が進む
◆“ハコ”の制約を超える


【無料】サンプル版を差し上げます 本記事は日経コンピュータ3月18日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集」の全文をお読みいただける【無料】サンプル版を差し上げます。お申込みはこちらでお受けしています。 なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

 気がつけばコンピュータが形を変えている─性能やコストを突き詰めた結果、これまで見たことのない姿が現れた。その形は、まるで子供が遊ぶ粘土細工のように“自由自在”だ。

 そうした取り組みの一例が、日本オラクルが1月に投入した「HP Oracle Exadata Storage Server」である。同製品が目指したのは、全件検索が速い「データウエアハウス(DWH)専用機」。

 「DWHはストレージが性能のボトルネックになる。データベース(DB)のインテリジェンス(データ処理機能)をストレージに入れ、処理性能を飛躍的に高めた」。開発責任者のホアン・ルイーザ氏はこう説明する。とことん性能を追った先に、同社初のハードウエア製品が生まれたというわけだ。

きっかけは情報爆発

 なぜ今、コンピュータが形を変え始めたのか。それは爆発的に増加する情報を受け止めるためだ。

 IDCとEMCは2008年の調査で、全世界で生成されるデジタル情報は07年の281エクサバイトから、11年には1800エクサバイトに増えると予測する。携帯電話やセンサーネットワークなどの普及が、個人に“情報発信”を促す。マルチメディアの多用はデータ量を膨らませる。

 急激な情報量の増加は、設計方針の転換をシステムに迫る。「これまではどのデータを取るかを決めて性能やキャパシティを見積もってきた。しかし情報爆発の下ではどんなデータでも全部取っておき、後から素早く分析できることが求められる」。日立製作所 経営戦略室 事業戦略本部の香田克也 担当本部長はこう指摘する。

援軍は雲の向こうから

 オンメモリーDBやSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)搭載ストレージなど、高速処理に向けてメーカーは様々な製品を打ち出す。この分野で頼りになるのが、“雲の向こう(クラウド)”を支えている技術や製品だ。「大量のデータを超高速、しかも低コストで処理したい」。この課題への取り組みではクラウドに一日の長がある。

 例えば、memcachedに代表される「分散メモリー」。分散配置したデータを並列処理する手法は、サイバーエージェントやミクシィ、楽天といった企業ではもはや定石といえる(写真)。ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を提供するフェースブックはmemcachedを使い、実に800台のサーバーで28Tバイトの分散キャッシュを作った。その拡張性は折り紙つきだ。

 三菱UFJ証券 市場商品本部の谷口肇 IT開発課長も分散メモリーに関心を寄せる一人。「デリバティブのリスク計算処理などに膨大な処理能力が必要だ。今は500台のブレードサーバーをグリッド技術で束ねてこなしているが、今後はmemcachedなどの分散メモリーを活用できないか考えている」と話す。システムの窮状を救うテクノロジの風が、クラウドから社内に向かって吹き始めた。

写真●サイバーエージェントは2月、分散メモリーを活用した「アメーバピグ」をリリースした
写真●サイバーエージェントは2月、分散メモリーを活用した「アメーバピグ」をリリースした
450万人の会員を利用対象とするコミュニケーションサービス。オープンソースの分散メモリー「memcached」を活用し、安価に性能向上できるアーキテクチャをとった

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