システムトラブルは、電気系統や機械の故障などほかの原因のトラブルよりもことさら大きく取り上げられ、被害の実態以上に問題視される。
これは、多くの情報システムの責任者や現場の担当者が実感していることである。
日経コンピュータは異を唱えたい。
「システムトラブルに対する非難の多くは理不尽である」
システムトラブルという全社に多大な影響を与えかねない一大事で、
理不尽な非難を受けては適切な対処がますます難しくなる。
しかし批判に耐えるだけでは何も解決しない。
システムトラブルに動ぜず、経営トップにも腹をくくってもらうことで、最悪事態を回避せよ。


(市嶋 洋平)

◆被害の実態以上に叩かれる
◆理不尽な非難が起こす悪循環
◆「ダウンに動ぜず」を実践


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 新聞やテレビがシステムトラブルを大々的に報じるようになって久しい。有名企業でひとたびトラブルが発生すると、こうしたマスメディアは「システム過信」「ITの落とし穴」と集中砲火を浴びせる。日常生活や仕事において情報システムへの依存度が高まっており、トラブルの影響範囲が格段に広がっているのは事実だ。それでも「マスメディアの報道は騒ぎすぎ」と思う情報システムの担当者は数多いだろう。

影響の軽重を無視

 本来トラブルの程度は、その影響度合いで測られるべきだ。しかしシステムトラブルとなると、話が別になる。

 例えば、昨年2008年末のJR東日本の新幹線運行システムのトラブルを見よう。ダイヤや乗務員割り当てなどを管理するシステムの操作を誤り、車両を営業運転に割り当てられない事態になり、始発から午前9時まで運行が止まった。その3カ月前の9月に発生した全日本空輸の搭乗システムのトラブルでは、システム設定の問題で、全国の空港出発ロビーの係員端末がダウンし、搭乗手続きができなくなった。53便が欠航し、277便が1時間以上の遅延となった。

 この二つのトラブルは、「またも大規模システム障害」「乗客はうんざり」と大きく報道されたが、システムトラブル以外のケースではどうだったか。昨年9月に発生したJR常磐線の架線トラブルでは、午前7時から3時間不通となり、約16万人もの足に影響が出た。明らかに、新幹線や全日空のシステムトラブルに比べると規模が大きい。新幹線の運休や遅延で影響を受けたのは13万7700人、全日空は6万8000人である。しかし、この架線トラブルの報道は“ベタ記事”扱いだった。

 在来線に比べて新幹線や飛行機の方が交通手段としての重要度が高いという見方もあるが、迷惑を受けた乗客の立場に立てば正しくない。昨年9月のトラブルの発生時間は通勤ラッシュ時であったため、大事な取引先との商談や、社内の重要な会議をキャンセルせざるを得なかった乗客も大勢いたはずだ。

 “マスメディアリスク”や“世論リスク”という過剰なリスクを抱え続けたままでは、システム責任者も現場の担当者もたまったものではない。重要な社会インフラを支える使命を全うしていても、ささいなトラブルですべてが水泡に帰す。

 しかも、バッシングを受けることでシステム部門の現場が冷静さを失い、的確な判断ができなくなる危険もある。混乱の収拾に乗り出さない経営者も少なくなく、事態をより深刻なものにする。では、この問題に解はないのか。専門家や実際にシステムトラブルの危機に直面した企業への取材から、その糸口を見つけた。


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