現場の利用者と情報システム部門の両方が“幸せ”になるPC管理――。絵空事ではない。パイオニアや国分、富士フイルムなど各社はすでに実践している。セキュリティ対策やコンプライアンス対応が求められるなか、PC管理の重要性は増すばかり。今日からでも既存ツールを使いこなし、PC標準化に取り組むことで“みんなが喜ぶ”管理は可能だ。有用な新サービス/技術も相次ぎ登場している。


(福田 崇男、小原 忍)

◆“両者幸せ”は可能だ
◆手持ちのツールを使い切る
◆標準化に取り組もう
◆もう使える新サービスと新技術


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 電機メーカーが地方に設置したサービスステーションで、困惑した社員が東京にある情報戦略部のサポートセンターに電話をかけていた。「営業から帰ってきたらパソコンが立ち上がらないんです。明日は朝から使いたいのですが何とかなりませんか」。サポートセンターの担当者は、その社員の部署名と名前を聞いた上で、「今晩、こちらから復旧してみます。本日はお帰りいただいて構いません」と返答。夜中に東京からネットワーク経由で当該パソコンを起動し、BIOSを確認した上で運用管理ツールにより環境設定が壊れていることを確認、修復した――。

 パイオニアで年に十数回見られる光景である。遠隔地から復旧できるのは、サービスステーションのPCに米インテルのPC管理技術「vPro」を搭載した機種を採用しているから。vProを使えばリモートから電源を入れることが可能だ。OSが立ち上がらなくてもBIOSの設定を変更したり、破壊されたOSの環境を修復したりできる()。

図●パイオニアでは地方の小拠点にあるPCの不具合も、ハード故障以外はすべて東京から修復できる
図●パイオニアでは地方の小拠点にあるPCの不具合も、ハード故障以外はすべて東京から修復できる
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 同社がこうした仕組みを構築したのは2007年5月のこと。業務部門が購入する標準PCの一つにvPro対応機を用意した。事前にvProの機能を使えるよう設定しておけば、サポートセンターからWebブラウザを使って電源投入を含んだ復旧作業が可能だ。vPro対応機は非対応機に比べて2万円程度割高だが、PCが使えないことが業務停止につながる小規模拠点では抵抗なく予算を組んでくれる。現在同社が運用管理するPC約1万台のうち、vPro対応機は2000台。その中でvProの管理機能が使えるように設定してあるPCは200台だ。この台数は増えつつある。

 ただしいくらvPro対応機であっても、そのPCのIPアドレスやMACアドレスがわからなければネットワーク経由でアクセスできない。パイオニアは全社展開済みのPC運用管理ツールとDHCPサーバーの情報を活用。PCの利用者情報とアドレス情報を統合し、検索するシステムを構築した。

利用者もサポート担当者も同じ境遇

 同社は国内に約100の拠点を持つが、情報システム部門があるのは10拠点程度。人数が少ない地方のサービス拠点などにはシステム要員を置けない。

 遠隔復旧の仕組みを整える以前は地方の拠点でPCが立ち上がらなくなると大変だった。サポートセンターの担当者が利用者と電話で話をしながら障害個所を突き止め、作業を指示する。OSさえ起動できればリモート操作ソフトを使って原因を探れる。しかしOSが起動できないのでは手も足も出ない。例えばフロッピディスク(FD)を入れたまま電源をオンにし、FDブートに失敗して立ち上がらないという初歩的なミスでも、ITに詳しくない利用者には何が悪いかわからない。

 PCが1台しかない拠点もある。そのPCが動かないと伝票を印刷できず業務が止まってしまう。利用者はPCをすぐに直してもらいたいのにサポートセンターから電話でいろいろと質問・指示され、ストレスがたまるばかり。実はサポートセンターの担当者も同様だった。担当者の経験がある情報戦略部統括部企画グループの中村正彦 副参事は「夜中まで付き合わせるのは心苦しい一方で、『何もしていない』と言うばかりの人や、原因究明に協力的でない人もいた」と打ち明ける。

 打開策として、出張サポートをしてくれるサービスの利用も検討した。しかし対象は小規模拠点のみ、OSが立ち上がらないケースが年に十数回程度では費用対効果の面で割に合わない。

 現在、利用者は電話で依頼するだけですぐにPCを復旧してもらえるようになった。サポートセンターの担当者もストレスをためることなく、ネットワーク経由で復旧できる。もちろんハードウエア障害が起きたらvProを使っても復旧はできないが、「実際はvProの機能で直せるソフト面の不具合がほとんど」(中村副参事)だという。


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