ブラウザやメールソフトに続いて、オフィスソフトにも無料化の波が押し寄せてきた。住友電気工業やNTTコムウェアといった大手企業から無料オフィスソフトの採用報告が相次ぐ。市場で圧倒的なシェアを持つマイクロソフト製品との互換性は十分に保たれているのか。障害時の対応に支障はないか。無料オフィスソフトの実力を探った。


(白井 良)


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 これまで有料が当たり前だったオフィスソフト。だが、ここにきて無料ソフトが存在感を増している。

 NTTコムウェアは今年1月、社員全員のパソコンに無料オフィスソフト「OpenOffice.org」(オープンオフィス)を導入した。その数ざっと5000人。国内では最大級の導入となる。

 5月には住友電気工業が続いた。国内のグループ企業にある最大約1万5000台のパソコンを対象に、オープンオフィスを順次導入していくと決めた。これまでは台所事情の厳しい地方自治体くらいしか導入実績がなかったオープンオフィスが、一気に民間企業に広がり始めた()。

図●今年に入ってオープンソースのオフィスソフト「OpenOffice.org」(オープンオフィス)を導入した企業・自治体の例
図●今年に入ってオープンソースのオフィスソフト「OpenOffice.org」(オープンオフィス)を導入した企業・自治体の例

MS Officeと互換

 オープンオフィスは無料で使えるオフィスソフト集。ワープロ、表計算、プレゼンテーション、データベース、描画の5ソフトで構成する。一般にマイクロソフトの「Microsoft Office」(MS Office)の互換ソフトと扱われる。例えばワープロ、表計算、プレゼンテーションの3ソフトのデータはマイクロソフト製品と同じく「doc」「xls」「ppt」といった拡張子の文書ファイルを読み書きできる。搭載する機能や操作性は企業で最もよく使われているMS Officeの2000/XP/2003に近い。

 現在はオープンソースソフトとしてコミュニティの管理下にあるが、もともとは独スター・ディビジョンが作った商用ソフトだった。米サン・マイクロシステムズが同社を買収し、2000年にオープンソース化した。

 ただし当初の評判は芳しくなかった。「2003年に導入検証した段階では、業務に使えるレベルではなかった」。早くからオープンオフィスの活用を検討していた福島県会津若松市総務部情報政策課の本島靖氏は打ち明ける。「Wordで作成した文書を読み込むとレイアウトが崩れたし、そもそも動作が不安定だった」という。

 だが、そこは世界中のエンジニアが開発に参加するオープンソースソフト。完成度は次第に向上した。「2004年6月に登場したバージョン1.1.2あたりで動作が安定。2005年10月にリリースされたバージョン2.0からレイアウト崩れも少なくなってきた」。本島氏は評価する。同市は今年5月から市役所内のパソコン850台に順次、オープンオフィスを導入する。

 民間企業としてよりシビアな目で見る住友電工 情報システム部セキュリティ技術グループ主席の大釜秀作氏も同意見だ。「レイアウト崩れの問題は、昨年9月に登場したバージョン2.3でほぼ合格点に達した」という。

 もちろん「完全互換」とはいかない。マイクロソフト製品と機能や操作性は100%同じではないし、マクロの文法や関数も微妙に違う。

 とはいえ無料というのは、やはり魅力。MS Officeとの非互換の度合いが許容範囲で安定性やサポートに問題がなければ、オープンオフィスは企業にとっても有力な選択肢となり得る。


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