現場の知恵を掘り起こせEUC2.0でIT力を高めるユーザー部門主導でシステムを導入したり、現場支援の精鋭組織を作ったりする企業が相次いでいる。競争力を高めるために、現場に眠る“知恵”を掘り起こすのが狙いだ。ユーザー起点でシステムを企画・導入する「EUC 2.0」に舵を切った14社の取り組みから、その効用と推進体制のポイントを探る。
ユーザー部門(現場)主導によるシステムの企画・導入を積極的に進めたり、現場支援の専門組織を作ったりする企業が相次いでいる。システムを活用して企業競争力を高めるために、現場に眠っている“知恵”を掘り起こすことが狙いだ。1990年代に注目されたEUC/EUD(エンドユーザー・コンピューティング/ディベロップメント)の再来のようだが、当時と今とは状況が違う。 ユーザー部門のITリテラシは確実に高まっているし、会社のITガバナンスや内部統制を保つためのルールも整備されてきた。SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)のような、新しいサービスも続々と登場している。今どきのルールとツールを生かし、現場主体でシステムを企画・導入する「EUC 2.0」に舵を切った14社の取り組みから、その効用と推進体制のポイントを探った。 システムは現場が調達、準備半年・外注費ゼロ不動産管理のリロケーション・ジャパンは2008年1月、新サービス「空家巡回サービス(仮称)」を始める。海外赴任や長期旅行などで留守にする家を定期的に訪問し、部屋の空気を入れ替えたり、家屋や周囲の状況をデジタル・カメラで撮影。これらの結果をWebサイトを通じて顧客に報告する。 このサービスを立ち上げたのは、入社6年目の女性社員を中心とする若手グループだ。不動産管理や営業といった通常業務のかたわら、約半年をかけてビジネス・プランを練ってきた。顧客や巡回業務の内容を管理したり、Webサイト上で報告書を公開するシステムも自ら作り上げた。 システム基盤としてセールスフォース・ドットコムのCRM(顧客関係管理)サービス「Salesforce」を採用しているものの、データベースで管理する項目を設定したり、報告書をPDF化して公開する処理を定義したりする作業は、6人の企画メンバーが行った。システム部門や社外のITベンダーの手は一切借りていない。 「ビジネスを一番理解している現場が主体的にシステムの企画や導入にかかわれば、(システム部に依存し過ぎていた)今までよりも、もっと早く、もっと安く、効果的にシステムを活用できるようになる」。中谷憲一郎執行役員は、現場主導型のシステム企画・導入のメリットを強調する。 「Salesforce」を現場に開放「何ができるのか、どうすればできるのかが分かれば、どんどんアイデアを形にできる。自分たちの手だけで試行錯誤を繰り返せるため、テンポ良く新サービスを企画できる」と、プロジェクトを率いたリロケーション管理ユニットの宇都宮直子氏は言う。 このようにユーザー部門が自由にシステムを導入できるのは、システム部門が「Salesforce」の利用を全面的に認めているからだ(図)。導入目的や管理するデータ項目などを事前にシステム部門に報告すれば、自由にデータベースを作ったり、Salesforce上に機能を追加したりできる。
システム部門が権限の一部を現場に委譲したきっかけは、2005年当時、社宅管理部門の部長を務めていた中谷氏が、独自判断でSalesforceを導入したことだった。「システム部門やITベンダーと議論している時間がもったいなかった。システム部門から怒られることを覚悟して、見切り発車で導入した」(同)。 ところが、事態は思わぬ方向に進んだ。現場の社員がSalesforceの新しい活用方法を提案したり、他部門への導入を促し始めたのだ。「禁止して現場のやる気を削ぐよりも、ルールを決めて活用を促したほうが得策」と経営陣も判断し、会社として正式に現場主導のシステム導入を認めることにした。 システム部門にとって、現場主導のシステム導入に対する不安は大きい。データベースやアプリケーションが社内外に散在し、管理不能になるからだ。システムを作った人材の退職や他部門への異動によって、システムを保守できなくなる懸念もある。一方、開発ツールやデータの格納場所を限定すれば、こうした懸念はぐんと減る。 現在、同社では空家巡回サービスのほかにも3つのプロジェクトが進行中だ。いずれも現場の有志が集まり、業務改善や新サービスで活用するためのシステムを企画・導入している。 「情報システムは、もはやシステム部門やITベンダーだけの特別な存在ではなくなった。現場の知恵を生かすには、もっとITを現場に開放すべきだ」と、中谷執行役員は現場主導型のシステム導入を強く推す。 続きは日経コンピュータ12月24日号をお読み下さい。この号のご購入はバックナンバーをご利用ください。
出典:2007年12月24日号
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