富士通が4月17日、米サン・マイクロシステムズと共同開発していたSPARC/ Solarisベースの新サーバーを発表した。「SPARC Enterprise」の統一ブランドで両社が販売する。富士通は、SPARCブランドを全面に押し出すことで、グローバル市場に打って出たい考えだ。


本記事は日経コンピュータ 2007年4月30日号に掲載予定のレポートより、本文のみを抜き出したものです。そのため図や表が割愛されていることをご了承ください。

 富士通とサンが発表したのは、「Advanced Product Line(APL、開発コード名)」と呼ばれていたサーバー。実質的には富士通が主体となって開発した(図)。

 SPARC Enterpriseの目玉は、中・上位機種に搭載した新CPU「SPARC 64 VI」である。これまでのSPARC64 Vをベースに、マルチコア化を図り、マルチスレッド(最大2スレッド)で動作する。メインフレームが持つ故障検出機構を搭載し、障害検出点の数をSPARC64 Vより増やすことで、誤動作の原因をより迅速に把握できるようにした。SPARC64 VI搭載機の価格性能比は、現行PRIMEPOWERの1.5~2倍になるという。

 富士通は、SPARC Enterpriseの出荷を機に、現行の「PRIMEPOWER」ブランドを捨てる。SPARCブランドで海外のUNIXサーバー市場に打って出るためだ。

 同社はこれまで、国内外で合計12万台のPRIMEPOWER(Sシリーズを含む)を販売した。しかし海外では、「PRIMEPOWERの知名度は、国内と比較にならないほど低い」(プロダクトマーケティング統括部の佐々木一名エンタープライズサーバ部長)のが実情だ。2006年の出荷台数は全世界で出荷されたSPARC/Solarisサーバーの6%強にすぎない。

 グローバルに見たSPARC/Solarisサーバーの市場規模はいまだ大きく、サンが多数の顧客を抱えている。だが、ここ数年は、米IBMや米ヒューレット・パッカード(HP)による侵食が始まっている。富士通は、このSPARC/Solaris市場でのシェア拡大を目論む。そのため、「サンとは、地域によって売り分けるような契約を結んでいない。北米市場でも当社がどんどん売っていく」(佐々木部長)と言う。

 富士通とサンがAPLの共同開発を発表したのは2004年6月のこと。当初は、06年6月に製品を出荷する計画だったから、1年近くずれ込んだことになる。その間に、IAサーバーの性能や信頼性が向上し、「最強のサーバーを作る」とした目標もかすんでしまった。富士通自身がハイエンドIAサーバー「PRIMEQUEST」を2005年に投入し、売り込み強化を図っている。

 PRIMEQUESTとの競合について、エンタープライズサーバ事業部の瀬古茂計画部長は、「PRIMEQUESTに搭載するOSはLinuxとWindowsのみで、Solarisを搭載する計画はない。SPARC Enterpriseとの売り分けは可能だ」と強調する。

 しかし、黒川博昭社長が「製品の種類が多すぎる」と認め、メインフレームからUNIX/IAサーバーまでを自社開発したことで投資額が膨れ上がっているのは事実だ。1年という開発計画の遅れが、大きな誤算を生む可能性もある。

(菅井 光浩)