サーバーの姿が大きく変わりつつある。主役に躍り出たのはブレード・サーバーだ。独自の構造がもたらす集積度や拡張性、保守性の高さを評価する企業が増えてきた。オリンパスや三菱東京UFJ銀行、WOWOWなどが情報系や基幹系のシステムに導入し始めた。

(玉置 亮太)

組んで使うから凄い
ブレード徹底解剖
ブレードはまだ過渡期


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 サーバーの姿が大きく変わりつつある。進化の主役に躍り出たのはブレード・サーバーだ。

 専用のきょう体にブレードと呼ばれる板状の演算処理部分を差し込んで使う――。話題先行の感が強かったブレード・サーバーだが、独自の構造による集積度や拡張性、保守性の高さに、新世代のサーバーの解がある。

 「ブレード・サーバーは従来のサーバーと根本的に発想が異なる。最大の違いは、単体のサーバーではなく、様々なモジュールを組み合わせる『システム』であること。この組み合わせを変化させることで処理性能や可用性を高めることができる」。ガートナー ジャパンのアナリストである亦賀忠明バイスプレジデントは、ブレードの本質をこう説明する。

 演算処理部分だけでなく、ディスクやネットワーク、冷却ファンといったモジュールを、必要に応じて組み合わせて利用するため、一部が故障しても容易に交換できる。乱立するサーバーの管理に苦しむ企業にとって、ブレードのメリットは大きい。集積度が高いため省スペース性、複数ブレードの運用管理機能に優れる。

 すでにメーカーは、ブレードに舵を切り始めた。各社は、「市場の7~8割はブレードが占めるようになる」との見方で一致する。

 その先に見えるのは、ユーティリティ化したITインフラの姿だ。急速な変化を遂げるブレード・サーバーを徹底解剖し、サーバーの将来像に迫る。

組んで使うから凄い

 「導入する前は全く興味がなかったが、実際に使ってみると、保守・管理が楽。ブレード・サーバーの良さを実感している」。ブレード・サーバーを導入した企業の多くは、その利点をこう評価する。

図●ブレード・サーバーの構造と進化の方向性
 ユーザー企業が口にするブレード・サーバーの利点は、その独特な構造に由来する。ブレード・サーバーの実態は、様々なモジュール(部品)を組み合わせたシステム()。これに対して、タワー型やラックマウント型のサーバーは単体で機能する。

 ブレード・サーバーの主要部品は、プロセサやメモリー、ハードディスクなどを搭載した、ブレードと呼ばれる板状のモジュールと、これを格納する専用きょう体。実際には、ブレード以外に「シャシー」や「エンクロージャ」と呼ばれるきょう体に冷却ファン・モジュール、電源モジュールなどを取り付けて利用する。

 ブレード・サーバーでは、必要に応じてモジュールの数を増減させることができる。故障したモジュールだけを交換することも容易だ。ブレード・サーバーの強化に積極的な日本ヒューレット・パッカード(HP)の上原宏本部長は、「サーバーに不可欠な演算処理や外部インタフェース、電源などの機能をいったん分割して組み合わせるという、新たな構造を採用したことで、既存製品にはなかった集積性や拡張性、保守性の高さを実現した」と語る。

年率20%で成長を続ける

 すでにオリンパスや三菱東京UFJ銀行、ジェーシービー、衛星放送大手のWOWOWといった大企業が、情報系や基幹系業務の処理にブレード・サーバーを採用した。調査会社のIDC Japanによれば、2010年までサーバー市場全体が5%の伸びにとどまるなかで、唯一年率20%の割合で出荷台数が成長するとみられる。

 メインフレームを参考にして1980年代に登場して以来、時代が進むにつれ、サーバー処理能力や入出力性能の向上、ディスク容量の拡大といった変化を重ねてきたが、すべての部品をきょう体に内蔵し、単体で動作できるという基本構造に変化はない。90年代中盤に登場した、厚さ数センチメートルのラックマウント型サーバーにしても、タワー型を押し潰しただけで、構造に大きな差はないと言える。

 もちろん現在のブレード・サーバーは、まだサーバーの完成形とはいえない。互換性や価格対性能比、発熱などの課題も残っている。必要に応じて資源を利用できる「ユーティリティ化したITインフラ」と、既存のサーバーとの過渡的な存在と言える。

 ただ、作り手のコンピュータ・メーカーは、課題の解消に本気で取り組んでいる。IDC Japanの福冨里志サーバーリサーチマネージャーは「サーバーは将来、実際に動作しているハードの数によらず、あたかも巨大な1台のコンピュータのように利用できるようになる」(プロダクトマーケティング1部ソリューション企画第1課の照井一由氏)と断言した。これが最終的なサーバー進化の行方である。


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