2008年4月以降に始まる事業年度から上場企業に適用される日本版SOX法(J-SOX)を巡り、いま市場は「2000年問題」以来のブームに沸き返っている。150社超のITベンダーやコンサルティング会社が、7000億円市場に相次ぎ参入。「一律5億円を提示するコンサルティング会社がある」などのうわさにも事欠かない。日本中を巻き込む“狂想曲”ぶりをレポートする。

(島田 優子、井上 英明、田中 淳)

「実施基準」前夜の大騒動
それってホント?五つの通説の実態
「ITの重要性はより高まる」
J-SOX対応に役立つCOBIT for SOX第2版


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 日本版SOX法は「勘定奉行」にお任せあれぃ――。オービックビジネスコンサルタント(OBC)は過去最大の頻度で、歌舞伎役者が見えを切るテレビCMを流している。8月には19~23時を中心に、昨年の1.5倍の頻度で放映。お盆期間はほぼ1日中CMを打った。「当社のERPパッケージ(統合業務パッケージ)を売り込むのに、日本版SOX法(J-SOX)は絶好の機会」と、営業企画室の高村浩之氏は強調する。同社が今年投じる広告宣伝費は6億~7億円に達するとみられる。

図●日本版SOX法の成立からの流れ
 OBCのCMは、日本版SOX法を巡る“狂想曲”の象徴と言える。上場企業約3900社に対して、2008年4月以降に始まる事業年度から内部統制報告書の作成と監査を義務付ける「金融商品取引法」が6月7日に成立。昨年12月に金融庁企業会計審議会の内部統制部会が公表した「基準案(財務報告にかかる内部統制の評価および監査の基準案)」と併せ、日本版SOX法の姿が明確になってきた。いま市場は「2000年問題」以来のブームに沸き返っている。

 5月から8月中旬までに出版された、日本版SOX法に関連する書籍は約30冊。同法に関するセミナーも、7月だけで延べ150回以上開催された。

 OBCに限らず、ベンダーの期待は大きい。内部統制の仕組み作りにITが欠かせないことに加え、日本版SOX法では内部統制の基本的要素として「ITへの対応」を挙げているからだ。IDCジャパンによれば、08年までの日本版SOX法関連のIT市場は7000億円。連結対象会社を含めると対象が数万社に上り、しかも同法への対応は全社的かつ継続的な取り組みなので、大きな波及効果も見込める。

 実際、法案成立から2カ月の間に、日本版SOX法関連の製品およびサービスに関して55件が発表された。ほぼ毎日のように、関連製品やサービスが発表されていることになる。中には、メール・ソフトなど「なぜSOX法対応?」と首をかしげたくなる製品もある。

 一方で、日本版SOX法に関するさまざまな説が飛び交う。例えば、同法対応のガイドライン「実施基準」に関して、「登場を待って対応すればよい」と見る向きもあれば、「登場を待たずに対応すべき」との声もある。実施基準の草案は早ければ10月に公開される。ほかにも「億単位の費用を覚悟すべき」、「コンサルタント不足がすでに深刻」などの話が、まことしやかに流れる。「一律5億円をユーザー企業に提示するコンサルティング会社がある」、「あの企業はSOX法対策に100億円以上を投じた」などの“うわさ”にも事欠かない。


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