セブン-イレブン・ジャパンは5月、「第6次総合情報システム」を稼働させた。8年ぶりの全面刷新だ。日本を代表する超優良企業である同社が、500億円という巨費と4年6カ月をかけて構築した最新システムとはどのようなものか。「本部情報分析システム」、「店舗システム」、「開発プロジェクト」を軸に、その全体像を明らかにする。

(大和田 尚孝、今井 俊之)

第6次システムの全貌
単品管理から「個店」対応へ
仮説検証型の業務に誘導
コスト3割減への挑戦


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図●セブンイレブンの本部情報分析システムにおける進化。第6次システムでは、店舗の立地特性に応じてデータ分析できるようにした
 大型連休明けの5月8日。セブン-イレブン・ジャパンは東京・渋谷にある直営店で「第6次総合情報システム」を稼働させた。10月末までに、セブンイレブン全店に展開する。500億円という巨費と4年6カ月をかけた大規模なシステム再構築の狙いは、ただ一つ。1万1000店強の店舗で働く店主やアルバイト、パートの誰でも、売れる商品を、適切なタイミングで適切な量だけ発注できる仕組みを作ることだ。

 これを聞いて「ん?」と、首をかしげる読者がいるかもしれない。店員が仮説に基づいて商品を発注し、その売れ行きを検証。これを日々繰り返すことで品切れや過剰在庫をなくす「仮説検証型」の経営を、同社が実践しているのは広く知られた事実。第6次システムの狙いはそれと全く同じで、「なぜまた同じことを?」という疑問が出てくるのは無理もない。

 だが、新システムの開発責任者であるセブン&アイ・ホールディングスの佐藤政行 執行役員システム企画部CVSシステム担当シニアオフィサーは、「すべての店員が同じレベルで仮説検証型の発注ができていたかといえば、そうではなかった」と打ち明ける。「第6次システムでは、発注者ごとの経験の差をITがカバーする。仮説検証の精度をさらに上げ、高いレベルで売れ残りと欠品をなくす」。

 ただ、第6次システムには一見、目新しさはない。クライアント/サーバーという基本アーキテクチャは変わっていないし、SOAやWebサービス、Ajaxのような最新技術を駆使しているわけでもない。

 半面、きめ細かな工夫を随所に盛り込んだ。一例が、店舗経営指導員(OFC=オペレーション・フィールド・カウンセラー)が使う本部情報分析システム。レスポンスを上げるために、過剰性能とも言える最新の大型サーバーを採用した。このシステムで、各店舗の立地と周辺にある施設という二つの情報を新たに扱えるようにしたのも、第5次システムとの大きな相違点だ。

 一方、店員が発注に使う携帯端末では、従来は41画面しかなかったのを230画面に拡充。商品情報や天気予報、催事など、仮説立案に必要な情報を漏れなく表示するようにした。比喩的に言えば、こうした工夫によって99%だった発注精度を99.999%に引き上げるのが、第6次システムなのだ。

 鈴木敏文 会長兼CEO(最高経営責任者)は、「売上高を追求していればいい時代は終わった。いかに利益を伸ばすかが重要だ。消費者のニーズを満たす商品をそろえて売り切ること、さらに売れない商品は排除すること。これらが、今まで以上に求められる」と、第6次システムの狙いを強調する。

 もちろん、それだけではない。セブンイレブンが第6次システムをこのタイミングで稼働させたのには、「満を持しての電子マネー対応」という理由もある。日本を代表する超優良企業であるセブンイレブンの最新システムとはどんなものか。「本部情報分析システム」、「店舗システム」を軸に、その全体像を明らかにする。


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