「電力が大問題」。データセンター事業者から悲鳴が上がっている。ハードウエアの消費電力と発熱量は増える一方で、空調設備を含めると電力の供給が追いつかない。ハード・メーカー各社は相次いで省電力技術を使った製品を売り出した。

(安藤 正芳)


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 「最新型のブレード・サーバーを大量に導入したものの、電力の引き込みが追いつかずラックにサーバーをすべて詰め込めない。せっかくのラックはスカスカの状態だ」。こう打ち明けるのは都内のあるデータセンターの責任者だ。このセンターは5年前に建設されたが、2005年の半ばから深刻な電力不足に見舞われている。原因は、サーバー本体、サーバーを冷やす空調設備、サーバーと空調設備を支えるUPS(無停電電源装置)といった、センター内のすべてのハードウエアの電力消費量が増え続けていること。センターの責任者は、「予想をはるかに上回る勢いでハードウエアの消費電力は伸びている。都内のデータセンターはすべて電力不足に直面しているのではないか」と語る。

機器が発熱、空調を増強

 実際、データセンター事業者をまわってみると、どのセンターも電力問題を認識している。データセンター事業会社、ビットアイルのデータセンター所長を務める安藤卓哉取締役は「サーバーのラック当たりの消費電力は4年前に比べて3倍近くにまで増えている」と打ち明ける。

 NTTコミュニケーションズの荒井宏幸ビジネス推進部担当部長は、「当初予定していた1ラック当たり2kWの電力では足りず、現在は4kWを引き込んでいるユーザーがほとんど。しかし、インターネットビジネスを手がける顧客の場合、6kW以上を使っている。6kW以上は空調設備の増設が必要になる。こうした顧客は全体の2~3割あり、このまま増え続けるならば何らかの手を打たなければならない」と語る。

 電力不足を引き起こすきっかけはサーバー本体の消費電力が増加していること。プロセサの高性能化や高密度化によって、サーバーの消費電力は増加の一途をたどっている。ここからデータセンターの消費電力が増え続ける“魔のサイクル”が始まる。

図1●データセンターの消費電力の増加は大きな問題になっている。サーバーやストレージの消費電力が増加すると、ほかの設備も増強しなければならない
 サーバーが消費した電力は熱に変わるので、空調設備を増強しなければならなくなる。データセンターで消費する電力のうち、実に半分は空調設備で占められている(図1[拡大表示])。サーバーと空調設備のためにUPS(無停電電源装置)を用意しなければならず、さらに電力を消費する。

 だが電力量を簡単には増やせない。ほとんどのデータセンターは、建物内に引き込める総電力量が着工時に決まっている。電力設備を増設するとビル内の配線工事を含め、ばく大な費用がかかる。仮に増設に踏み切ったとしても、増やした電力はサーバーの発熱にまわり、また空調設備が必要になるという悪循環に陥る。

 ここ1~2年、自社でサーバーを運用せずデータセンターに任せてしまうケースも増え需要は伸びる一方だった。だが、このままでは電力が足らなくなり、データセンターの運営に支障を来しかねない。データセンターの建設を手がけるNTTファシリティーズの村尾哲郎ソリューション営業部担当課長は、「データセンターだけでなく、サーバーやストレージを開発するメーカーまで、業界全体が電力問題に取り組む時期に来ている」と話す。データセンター事業者に限らず、大型センターを持つユーザー企業にとっても電力問題は重大事である。


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