今、企業の根幹を支える基幹システムは、「第2章」と呼び得る段階に進みつつある。それは事業(ビジネス)で成果を得るために、これまで入手できなかった情報まで存分に活用できるシステムである。第2段階に到達した企業とその情報システムを、本誌は「エンタープライズ2.0」と総称する。基幹系・情報系という区分は消滅し、システムはより開かれた存在になっていく。

(小野口 哲、玉置 亮太)

みんな考えている
カタチが見えてきた
作り方を変えよう


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図●エンタープライズ2.0は必然的な進化である
 「重要な情報は、現在の情報システムでは得られない」。昨年亡くなった社会生態学者、ピーター・ドラッカー氏は、2002年の著書『ネクスト・ソサエティ』で喝破した。「現在の情報システムが与えてくれるものは社内の情報。成果が生まれるのは社外においてである」。

 昨今の企業情報システムは、顧客という「外部の情報」を充実させたが、ドラッカー氏は「もっとも重要な情報は、非顧客についてのもの。変化が起きるのはノンカスタマーの世界である」と言い切る。

 現行システムは内部情報なら何でも扱えるわけではない。受注業務一つとっても、営業活動や各種の調整作業があり、膨大な“情報処理”が発生している。にもかかわらず、現行システムが処理してきたのは、顧客名や受注金額など一部の情報に過ぎない。

 今、企業の根幹を支える基幹システムは、「第2章」と呼び得る段階に進みつつある。それは事業(ビジネス)で成果を得るために必要な情報を存分に活用できるシステムである。ドラッカー氏が指摘する「外部の情報」も、数値や発言、画像など社内で飛び交うさまざまな情報も扱える。

 第2段階に到達した企業とその情報システムを、本誌は「エンタープライズ2.0」と総称したい。エンタープライズ2.0は、ビジネスに必須の情報を、社内外問わず活用する。基幹系・情報系という区分は消失し、システムはより開かれた存在になっていく。顧客に直接システムを使ってもらうことが増え、操作画面は使いやすくなる。他社システムと連携し合って、一つのビジネスを支えることもある。

 ビジネスとシステムの一体化、顧客参加、操作性向上、他社連携。これらは、インターネットにおける「Web2.0」の諸条件と同一である。これは必然だ。「外部の世界の情報が、ついにインターネットで手に入るようになった」(ドラッカー氏)からだ。


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