経済産業省は4月にも、ユーザー企業のシステム担当者を想定したITスキル標準「ISSS」を公開する。IT戦略の立案やシステム企画、委託先管理などのスキル項目を定義したのが最大の特徴。ただし、レベルごとにスキルを定義するのはこれからで、まだ課題が多く残る。


本記事は日経コンピュータ 3月6日号に掲載予定のレポートより、本文のみを抜き出したものです。そのため図や表が割愛されていることをご了承ください。

 「ユーザー企業のシステム部門には、戦略立案やベンダー管理、システム活用支援など、ユーザー企業特有のスキルが求められる。ITSSを補う形でユーザー企業向けに作成したスキル標準があれば、人材配置や育成に生かすことができ、一層のシステム活用促進につながるはずだ」。

 経済産業省情報処理振興課の石塚康志課長補佐は、ユーザー企業向けITSSの「ISSS(Skill Standards for Information System、仮称)」を策定した狙いを、こう説明する。

 ISSSが規定するシステム部門の人材は、経営・IT戦略の立案を担当する「ISストラテジスト」、システム構築時のベンダー管理を担当する「プロジェクトマネジメント」、システムの活用を促進する「ISアドミニストレータ」など10職種(役割)。システム部門を側面から支援する人事・総務部門や協力会社などの人材も「ISスタッフ」7職種(「人材資源管理」や「契約管理」など)として定めた(図)。ISSSでは職種ごとに、(1)職務遂行力を表す「職責」と、(2)職務遂行に必要となる「知識・スキル」という二つの概念を使い、7段階に分けてスキルを定義する。

 職責では「職務範囲」と「職務責任」の二つの軸でスキル項目を定めている。職務範囲では、経営陣や利用部門、システムの構築・運用を委託するベンダーなどの業務をリストアップしている。例えば、ISストラテジストでは「経営戦略を実現するために必要なITの要素を調査・分析する」などである。それぞれの職務での責任の重さが職務責任となる。当然、レベルが高くなるほど職務範囲が広く、責任も重くなる。

 知識・スキルでは、IT戦略の立案やベンダー・マネジメントのために必要な要素を定めている。例えば、ISストラテジストであれば、「ロジカルシンキング」、「バランススコアカード」などの手法を使えるか、「戦略シナリオ」を図示できるかどうか、などだ。

 ISSSの策定は、経産省の委託を受けて日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が進めている。会員企業に対する実態調査を基に、大手ユーザー企業のシステム部長クラス約10人が作業を担当。経産省は4月中にISSSの暫定版をWebサイトを通じて公開し、パブリック・コメントを募集。それを反映した正式版を6月をめどに公開する。

 ただし、7段階のレベルごとにスキルを定義するのは、まだこれから。「職責と知識・スキルのバランスをどうするかに検討の余地が残っている」(JUASの角田千晴事業企画推進部長)ことから、公開後約1年をかけてユーザー企業をヒアリングし、レベルに合わせたスキル項目に体系化する計画だ。ISSSが利用に耐えるものになるまでには、もう少し時間がかかりそうだ。

(目次 康男)