情報システムにかかわるすべてのプロフェッショナルは今、東京証券取引所で起きた事件から教訓を学びとらなければならない。東証事件を招いた原因は、データ量の急増、西暦2007年問題、そしてビジネスとITの断絶である。これら3点は、すべての企業が直面する問題と言える。
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2005年11月、12月と連続して起きた、東京証券取引所の情報システムを巡るトラブルは歴史に残る重大事件である。情報システムが原因で、有力企業の社長が辞めたのは我が国の産業史で初めての出来事だろう。
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表●東証事件が示す「情報化の三問題」 |
本誌の結論は「東証同様のトラブルを他の企業が起こす可能性は大きい」というものである。企業の経営者と情報システム責任者は、ある日突然辞任に追い込まれるリスクを背負っている。
東証事件を引き起こした問題は大きく三つある。第1はインターネットの浸透に伴うデータ量の急増である。この点について、東証のシステム増強策が後手にまわったと指摘する意見が多いが、話はそう単純ではない。インターネット時代に合致した事業モデルをどう作るか、といった経営戦略の問題として考える必要がある。さもないと、やみくもにシステムを増強し続けなければならなくなる。
第2の問題点は、ITの西暦2007年問題である。ここで2007年問題とは、基幹システムが肥大化・老朽化する一方で、業務やシステムの全体像を見渡せるベテランが不足している事象を指す。東証事件の直接原因は、11月のシステム停止が運用手順の引き継ぎミス、12月の誤発注取り消し不能が6年間眠っていたプログラム不具合の顕在化、今年1月のシステム計画停止がバッチ処理性能の制約、であった。いずれも基本的な事項である。しかし、「基本は万全」と胸を張れる企業がどのくらいあるだろうか。
第3は、コンピュータの商業利用が始まって以来つきまとう「経営とITの断絶」問題である。東証の社長が辞任を決めたのは、誤発注問題で「東証に責任なし」と説明した後、一転して「東証システムに不具合」と発表せざるを得なくなったことが大きい。情報システム部門が自社システムの状況を的確に把握し、経営トップに素早く伝える体制を築くことは簡単ではない。
本誌特別取材班は、東証の西室泰三CEO(最高経営責任者)、鈴木義伯CIO(最高情報責任者)、前CIOの天野富夫氏、富士通の黒川博昭社長を取材した。9ページにわたり、技術面から経営面まで、多角的に検証する。
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