昨年4月1日に完全施行された個人情報保護法。その法律に対する対策が、さまざまなトラブルを生んでいる。「個人情報を含んだ紙をやり取りする際に、厳密なチェックを義務付けたら日々の業務が止まってしまった」、「部門間の情報共有をやめた結果、顧客サービスが低下した」などである。個人情報保護法に振り回される企業の実態を追った。

(福田 崇男、小原 忍)

あるカー・ディーラーの告白
完璧を求めると仕事が回らない
“ひずみ”を生む根本原因
「過剰反応は想定の範囲内」
——中央大学大学院 堀部政男教授インタビュー


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 昨年4月1日に完全施行された個人情報保護法。その法律に対する対策が、さまざまなトラブルを生んでいる。最も有名な“事件”は、施行直後に兵庫県尼崎市で起きたJR福知山線の脱線事故における、被害者情報の非公開だ。被害状況を問い合わせたマスコミに対し、病院は個人情報保護法を理由に情報提供を拒否。誰も、身内が被害に遭ったかどうかを確認できないという事態に陥った。その後も、学校で連絡網が作れない、業務上すぐに連絡を取りたいのに担当者の連絡先を教えてくれないなど、日々の生活や仕事に支障を来す事態が起きている。

図●事業者や行政機関からの問い合わせが多い
 企業も困惑気味だ。「個人情報を含んだ紙をやり取りする際、紛失がないように厳密なチェックを義務付けたら日々の業務が止まってしまった」、「コンサルタントが勧めるままに部門間の情報共有をやめた結果、顧客サービスが低下した」、「業界団体のガイドラインを順守したら、従来とは別の問い合わせ窓口を設置せざるを得なくなった。無駄なコストが発生した上に顧客にも分かりづらい」など、日々の業務が回らなくなったり、顧客からの苦情を招いたりしている。

 ある企業の保護法対策担当者は、「個人情報保護の意義は理解できるが、多大なコストをかけて法律に対応した結果が顧客の不便につながるというのは、納得しがたい」と憤る。法律が「部門間の情報共有はすべてダメ」などと定めるわけがないことは、常識で考えれば分かる。しかし、“法の影”に怯えると、とにかく個人情報を排除するといった安全策を採るしかない。さらに、「監督省庁のガイドラインに完全に沿おうと考えると、やってもやってもきりがない」(別の企業の担当者)。

 個人情報保護法に振り回される企業の実態を追った。


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