日本の情報システム担当者やIT技術者の“学会離れ”が深刻化している。国内最大のIT専門学会である「情報処理学会」は、この10年間で26%に当たる7000人強の会員を失った。そのほとんどが産業界の人材だ。学会の衰えは、産業界の衰退につながりかねない。日本のIT関連学会は、なぜ機能しないのか。その実態に迫った。

(大和田 尚孝、小原 忍)

見放される情報処理学会
学会の低迷が産業界に落とす影
米国の学会は38億円稼ぐ
産学連携の模索が始まる
「私が学会と産業界の関係を変える」
——情報処理学会会長インタビュー


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図1●国内最大のIT関連学会である情報処理学会が、ユーザー企業やITベンダーから見放されつつある
 米ハーバード大学ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授による『イノベーションのジレンマ』や、故ピーター・ドラッカー米クレアモント大学院大学教授が記した『ネクスト・ソサエティ』——。欧米では、企業のIT活用に大きな影響を与えるような、大学教授の著書は多い。しかし、日本のIT業界は違う。「精力的に活動をしている学者もいるが、その影響範囲は限定的。そのため、学者や研究者の活動には興味がないという技術者が増えている」(日本IBMの冨永章専務)のが実情だ。それは、産業界の“学会離れ”に端的に表れている。

 学会は、学者や研究者たちが情報を交換したり、研究成果を論文の形で発表する場。ユーザー企業やITベンダーの実務担当者にとって、学会の論文発表は、本来なら“宝の山”のはずである。ところが国内最大のIT専門学会である「情報処理学会」では、会員の減少に歯止めがかからない。この10年間で26%に当たる7000人強の会員を失い2万人強になったが、その抜けた会員のほとんどは産業界の人材だ。

 産業界が学会に見切りをつけると、学者や研究者はますます、現場で起きていることに疎くなる。産業界に影響を及ぼすような調査や提言を生み出しにくくなる。学会の力のなさは、産業界の衰退に直結すると言っても過言ではない。

 では、日本のIT関連学会は、どのような状況に置かれ、なぜ機能しないのか。その実態に迫った。


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