世界最先端のIT国家――高い目標を掲げた電子政府の実現に、5年の月日と3兆円超の予算が投入された。政府は「及第点」と自己採点するが、国民には全く実感がない。IT業界の将来はもとより、国力を左右する電子政府の実態に迫る。

(森側 真一、志度 昌宏)

報告●利用者不在の電子申請
実態●責任者不在の行政改革
提言●“足踏み”はもう許されない
インタビュー●
  棚橋康郎氏 経団連情報化部会長
  中井川禎彦氏 総務省行政管理局管理官
付録●CIO補佐官一覧、電子政府の進捗状況


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図●5年間に3兆円を投じた電子政府関連予算の推移。内閣官房IT担当室が集計した全省庁のe-Japan戦略予算のうち、「行政サービス」項目と「行政の情報化」項目を足し合わせた金額。2003年度は郵政省の公社化、04年度は国立大学や国立病院の独立行政法人化などにより、その予算が政府の電子政府関連予算枠から外れた。結果、電子政府関連予算金額は下がっている
 2005年12月、e-Japan戦略が目標達成期限を迎える。「5年以内に世界最先端のIT国家に」と、森喜朗首相(当時)が宣言して以来、電子政府に5年の歳月と3兆円超が投入された。

 電子政府はe-Japan戦略の重点課題の一つ。申請手続きをネット上ですませられる電子申請、官公庁業務の効率改善、情報システムの調達改革など、数々の改革目標を掲げた。その結果、住民基本台帳ネットワークシステムが鳴り物入りで登場。申請手続きの96%以上が電子化された。世界各国の電子政府ランキングも、一時の低迷を脱し、2005年には5位にまで躍進した。

 「及第点」――。電子政府を推進する総務省は、これまでの取り組みを、こう自己採点する。だが、電子政府の利用者である国民の側には、その実感は全くない。96%をカバーするという電子申請システムの利用率は1%以下。調達改革に向けて導入した「CIO補佐官制度」もほとんど機能していない。使われないシステムに多大な税金が投入されていく。

 電子政府の成否は、国民生活の質や、産業界の競争力はもとより、IT業界の体質改善をも鈍らせる。ITを利用した「小さな政府」を実現するための適切な舵を切れるのか。電子政府の現状に迫る。


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