Q2 IT戦略を基に実行計画を作成した後、実施段階でユーザー部門との認識のズレが明らかになり苦労する
IT部門でIT戦略を基にIT戦略実行計画を作成し、IT資源調達やIT導入を実施しています。現在はお付き合いしているITベンダーにIT資源調達とIT導入をお任せしていますが、ITシステム本番稼働前のテストフェーズでIT化対象業務を担当するユーザー部門との間で認識のズレによる意見調整にいつも大変苦労します。
ユーザー部門からは「使い勝手が悪い」「ITありきで業務プロセスを変えてほしくない」といった不満が多々出てきます。ユーザー部門の業務プロセスを改革しながら、本当に活用されるITシステムを構築するにはどのように実行計画を作成・実施していけばよいのでしょうか。これがIT化を推進する当部門の重点課題になっていますので、ご指導をいただければと思います。
A2 ユーザー部門とIT部門の間で責任分担やコミュニケーションのあり方を見直す
ご質問を整理しますと、IT戦略を基にIT戦略実行計画を作成・実施するときのユーザー部門とIT部門の間における責任分担やコミュニケーションに課題がありそうです。IT戦略を基に実行計画を作成・実施する体制がIT部門主導で、ユーザー部門との間で事前に十分なコミュニケーションが行われていないことが原因だと感じました。この観点から、以下の二つを中心に解説します。
- ユーザー部門主導でIT戦略実行計画を作る
- IT戦略実行計画の実施方針を明確にする
1.ユーザー部門主導でIT戦略実行計画を作る
IT戦略の目的は、ITを活用して現行業務プロセスを変革し、あるべき業務プロセスを構築・運用することにあります。そのために現行業務プロセスの課題を整理して、業務プロセス改革目標を設定し、それに基づいてIT戦略目標を設定してIT戦略実行計画を作成します。
業務プロセス改革目標とIT戦略目標の二つは、ユーザー部門とIT部門がそれぞれ責任を持って達成すべきものです。業務プロセスの改革目標の達成主体はIT化対象業務を担当するユーザー部門であり、業務プロセス改革ステップによって実現します。一方、IT戦略目標の達成主体はIT部門で、ITシステム構築ステップによって実現します。
ただし、業務プロセス改革ステップとITシステム構築ステップは独立したものではなく、ユーザー部門とIT部門がコミュニケーションを重ねながら、同期して進める必要があります。以上を示したのが図1です。順に解説しましょう。