Q2 IT導入に対する各業務プロセス改革部門・ユーザー部門の持つべき認識が弱く、検証の精度が落ちる
我が社の現在の基幹情報システムは、18年前当時にコンピュータ好きの常務がリーダーシップを取って、プログラミングのできる若手社員とともに二人で作り上げました。当時は最先端だったクライアント/サーバー型システムで、ITベンダーのサポートを受けながら、プログラム開発では一部を外注していました。
同システムを開発した当初は、常務の指導の下に若手社員が、関連するユーザー部門へヒアリングを行いながらシステムを構築しました。しかしユーザー部門はコンピュータが分からないという理由で、積極的に開発には参加しませんでした。やがて常務は個人的な事情で退職して、今は担当社員が一人で、システムの保守と運用を行っています。
このような経過により、ビジネス環境が激しく変化するにもかからず、適応力を失ったシステムは、経営者やユーザー部門の要望とも乖離して存在価値そのものが問われる一方、ユーザー部門では日々のビジネスに対応するためにユーザー自らが作成したExcel表が氾濫しています。経営トップとして見た場合、本来経営を助けるはずのITが、かえって経営の足かせになってきていることに、憂いを感じずにはいられません。
そこでユーザー部門を積極的に参画させて、全社一丸となって、新時代のビジネスに適応すべく情報システムの再構築を決断しました。つきましては我が社の目指す全員参加型の情報システム再構築プロジェクトを推進するために、関係者の参加意識を向上させながら、チームワークで業務改革とシステムの導入、そして運用を行うための指針を教えていただきたくお願い致します。
A2 経営トップのリーダーシップの下、総力戦・全組織参加の意識づけを行う
これは中小企業のIT化の経緯としてよく見られるケースと思われます。中小企業におけるIT化の初期段階では、コンピュータのプログラミングのできる人が貴重として、経営者もユーザー部門もそのような担当者に一目置きながらも、よく分からないという理由で、ITの管理運営を任せたままにする傾向が見られました。
しかし、それではせっかく構築した情報システムが、時間経過とともに経営者の意思を反映しなくなるとともに、現業とのギャップが広がってIT化本来の目的を果たせなくなります。
いわゆる「IT経営」とはそのような状況を脱して経営・業務とITを融合させ、企業価値の最大化を目標にして、情報システムの構築と運用を行う状態です。また、経営・業務環境の変化にも、スピード感をもって対応できなくてはなりません。
これまでも「IT経営」に成功した企業の多くは、何らかの経営上の問題をきっかけとして経営陣主導で業務改革を行い、IT化を行った結果として、業績アップといった成果を得ています。その意味で経営トップが自らその必要性に気がついたことは、非常にラッキーといえます。
以下、このご質問に、下記の順番で回答させていただきます。
- 「IT経営」実現は総力戦・全組織参加の意識づけ
- 全組織メンバーの「コミュニケーション」の確立
- 総力戦を束ねる「プロジェクトマネジメント」
- 「IT経営」の成果を見える化して舵取りをする「モニタリング&コントロール」
- プロジェクト終結は「IT経営」の次なるステップの始まり