Q2 経営者がIT経営を理解できず、経営者から実務者まで変革意識が醸成されない

 従業員数200人ほどの製造業で、毎年、経営戦略・IT戦略を策定しようとするのですが、経営者がIT経営を理解できないため、経営者をはじめとして現場の実務担当者まで変革意識が醸成されません。

 経営者のIT経営に対する理解向上と情報システムによる変革の推進に向けてどのように認識を深めればよいでしょうか?

A2 IT経営の意味をITと経営の両面から説明して理解を促進する

 「IT経営」と言われると、若手経営者やITに強く関心を持つ一部経営者を除いて、「難しい」「分からない」「若手に任せる」「ベンダーさんよろしく」といった対応になる中小企業経営者が多いと思います。多くの経営者は、「IT」が前に付いているので「経営」により本筋がある言葉だと感じているようですが、詳細については実感が伴っていないようです。

 しかし、経営者がもはやIT経営を理解できないでは済まされません。IT経営では、経営者を含めた経営陣の意識改革が基本的に必要です。経営陣が意識を改革しなければ、業務の合理化および人材の活用が進まず、効果的なIT化につながらず、各部門も生産性向上といった成果を得ることが難しくなります。

 経営者の方がIT経営を理解しにくいのはある程度やむを得ません。「IT経営」という用語は、そもそも「IT」および「経営」という全く別の言葉を合体した近代の造語です。

 ITコーディネータ資格制度の創設における経済産業省の狙いは、日本の中小企業の活性化と発展のためにIT化と経営改革手法の両面について支援できる専門知識とノウハウを持つ人材の輩出でした。同制度の狙いそのものは適切でしたが、発足当時の2000年頃には「IT経営」という用語はほとんど使われませんでした。

 一方、最近は政府の施策説明や白書でも「IT経営」という用語は大変多く使われ、普通名詞になってきた感があります。大枠の話では聞き流せる用語ですが、詳しく説明しようとすることは、経営者や現場の実務者のみならず、多くのIT産業従事者や経営コンサルタントにとっても難しいのが実態です。

 とはいえ、ご質問のように「経営者がIT経営を理解できず……」といったように、IT経営の中心にいるべき関係者がIT経営を理解できない現状では変革の推進は厳しいでしょう。

 そこでここでは、「経営改革」と「IT」それぞれの重要性については経営者の理解が得られたことを前提に、「IT経営」とは何かについて解説しましょう。具体的には以下の2点が重要です。

(1)「IT経営」はITと経営が融合した言葉である
(2)「IT経営」は目的と成果がハッキリしている

 それぞれについて順に解説します。