Q1 机上で練り上げた経営戦略・IT戦略に、現場の業務改革へつながらない「すき間」があり、戦略を活用できていない
従業員数が、200人程度で製品製造から販売管理までのプロセスを持つ製造業で毎年、経営戦略・IT戦略を策定していますが、いつも戦略を実践する段階でつまずいています。策定した経営戦略やIT戦略に、現場の業務改革へつながらない「すき間」があり、戦略をうまく活用できないのです。
確かに、SWOT分析注1や、BSC(Balanced Scorecard:バランススコアカード)注2といった理論的な活用手法は重要ですが、現場の視点に基づいて業務改革へつながる戦略になっているかどうか、十分に落とし込んで検証・立案されているように思えません。戦略策定作業に対してどのような改善をしたらよいでしょうか?
注2:バランススコアカードとは、「財務の視点」「顧客の視点」「内部業務プロセスの視点」「学習と成長の視点」から業績管理指標をバランスよく設定して、戦略実行や業績評価を行う手法。
A1 全社的なプロジェクトを編成し、適切な評価に基づいて戦略を策定する
今回のような事態は、経営者や事業部長といった経営陣が中心になって経営戦略やIT戦略を策定し、現場の問題/課題/改善要件/作業実態などを吸収・反映できていないときによく発生します。もっと現場の声や実態を反映して、業務改革につながる戦略策定を行うアプローチを取り入れるとよいでしょう。以下の二つの要素が重要です。
(1)全社的なIT経営改革プロジェクトチームの編成
(2)自社ビジネス競争力(業務遂行能力)の診断・評価
それぞれについて順に解説します。
(1)全社的なIT経営改革プロジェクトチームの編成
中小企業に限りませんが、一般に企業の経営計画やそれを具体化する経営戦略の策定は、経営陣が集まり、経営戦略本部あるいは事業戦略企画室と呼ぶ少人数のスタッフが机上の議論を行って作成したものを議論し、役員会で承認されることが多いと言えます。
戦略策定の際は、連載第1回の理論編で解説した「IT経営改革のためのプロセスガイドライン」を参考にした手法を採用していることでしょう。
具体的には、
- SWOT分析による現状のビジネス環境や現実事象の抽出・分析
- CSF(Critical Success Factor:主要成功要因)案の設定
- 事業ドメイン(対象事業領域)の定義
- BSCの戦略マップ作成プロセスに沿った検討・検証
ただし、少人数で限定的なメンバーによる経営戦略策定作業では、なかなか第三者の視点を盛り込めず、現場の業務改革につながらない「すき間」が残った戦略策定を行いがちです。その状況を改善するには、経営陣から現場リーダーまで全社が一丸となって「IT経営改革プロジェクトを編成する」ことが必要です。