Q1 SWOT分析を用いても感覚的なCSFになり、役に立たない

 トップの意向を受けて、経営戦略本部で事業戦略をSWOT注1分析手法を用いて策定していますが、現在の検討方法では若干不安があります。トップの意向にあるCSF注2案すら感覚的に検証しているように思えてなりません。

注1:SWOTとは、自社のビジネスに及ぼす環境要因を表します。Strength(強み)要因、Weakness(弱み)要因、Opportunity(機会)要因、Threat(脅威)要因の頭文字をとっています。
注2:CSFとは、事業を成功へ導く要因であり、経営戦略に向けた決定的成功要因です。Critical Success Factor(決定的成功要因)の頭文字です。

 その理由にはいくつかあるように思えます。第一に、SWOT要因整理の段階では喧々諤々(けんけんがくがく)の議論になるのですが、SWOT要因の整理基準に曖昧なところがあり、適切な整理ができていないようです。

 次に、CSF案導出ではブレーンストーミング手法を採用しましたが、トップの意向にあるCSF案や新たなCSF案を的確に検証し、その根拠を提示できているのかが少し不安な状況です。

 結果的に、CSF案はやや感覚的な合意で選択している状況です。会社の戦略を決めるミッションを持つ部署であり、より精度の高い戦略を検討したいと思っているのですが、どういう点を留意すればよろしいでしょうか?

A1 三つの留意点を考慮して作業を進める

 事業戦略を策定する最初のステップでは、社内外のビジネス環境要因からSWOT分析を実施し、事業ドメイン(領域)のCSF案を検証します。トップの意向にあるCSF案を基に新たなCSF案を導出するときにも、三つの留意点を踏まえて進めるのが作業を効果的にします。

(1)SWOTのビジネス環境要因は分類基準を設けて整理する
(2)CSF案発想では導出象限を設定する
(3)CSF案の共通認識をする

それぞれについて順に解説します。

(1)SWOTのビジネス環境要因は分類基準を設けて整理する

 ビジネス環境要因の分類基準は当然設定すべきですが、意外と曖昧な場合を見受けます。CSFはSWOT要因をもとに導出しますので、CSFを導出しやすいようにSWOT要因を整理することが必要になります。

 そのためには、まず内部環境要因の「強み(S)」と「弱み(W)」、および外部環境要因の「機会(O)」と「脅威(T)」を的確に分類する基準を設定し、整理しなければなりません。この分類基準について解説しましょう。

 内部環境要因とは自社内(または自社事業内)の環境要因を指し、現在の業界で競争優位性注3を持つ「強み要因」と競争優位に立てない「弱み要因」があります。自社内の要因なので「経営資源(ヒト、カネ、モノ、情報)」の強み/弱み、そして「経営機能(販売や生産などの組織機能)」の強み/弱みを表すことになります。

 CSF導出とは、この「強み要因」をより強くし、「弱み要因」を強い要因に変換するCSFを作ることに他なりません。強み/弱み要因は的確に分類することが肝要です。

注3:競争優位性とは、同業他社に比較しより強い経営資源や経営機能を有し、ビジネス活動で優位に立つこと。