伝えたいことが100%相手に受け入れてもらうことはとても難しいことです。ですが、顧客のOccasion(場合)を増やして情報の間口を広げた投げかけを行えば、多くの顧客に関心を示していただくことが可能になります。さらに、WebサイトやSNS、メールマガジンなどのメディアを有機的に結びつけたコミュニケーションシナリオを組み立て、「何が伝わって、何が伝わらなかったのか」、それを理解することが重要なのです。

 また、顧客がその情報に接したタイミング、そしてその情報に接するために活用したデバイスに関する情報を取得することも重要です。

 顧客とコミュニケーションを図るため、電話やメール、Webサイト、SNSなどのメディアが活用されます。重要なことはそれぞれのメディアの特性を理解したコミュニケーションを心がけることです。

 直接的なコミュニケーションとなる会話や電話では、顔の表情や声の大きさ、視線、身振りや手振りなどのジェスチャーなど、言葉以外の五感に訴えかけるコミュニケーションが重要な手がかりになります。しかし、会話のタイミングや会話の場に関する制約を受けてしまいます。しかも、もう一度会話の内容を再現しようとするには、記憶に頼るしか方法がありません。

 一方、メールやWebサイト、SNSを活用したオンラインのコミュニケーションではどうでしょうか。コミュニケーションを図るタイミング(曜日や時間帯)は、相手の事情や状態に合わせることができます。また、相手が好意にしている接点(メディア)でコミュニケーションを図ることもできます。しかも、コミュニケーションの形跡を残すことができます。

 重要なことは、オフライン(店舗)で行われているコミュニケーションスタイルをオンライン(ネット)でそのまま実施するのではなく、それぞれの特性を加味したコミュニケーションを図ることです。

 また、オンラインコミュニケーションで重要なことは、相手とのコミュニケーション接点で得られる情報を吟味し、「取れる情報」と「取れない情報」、「取るべき情報」と「取る必要がない情報」をきちんと分けて考えることです。

 そして、重要なことは、相手のTPOに関する情報から、相手への興味、相手への配慮、相手への質問、相手への気遣といった気づきを得ることです。得られた気づきでコミュニケーションを図っていく姿勢です。

 今回は、オンラインで顧客とコミュニケーションを育むうえで大事にしたい「ノンバーバルコミュニケーション」の視点と、ノンバーバルの視点を加味したコミュニケーションシナリオ(おもてなしのシナリオ)を組み立てていくことの重要性を解説しました。

 この連載を通じて、改めて「コミュニケーションの難しさ」や「コミュニケーションの面白さ/奥深さ」に気づいていただけたのではないでしょうか。

  一方的に情報を投げかけただけでは相手の行動や反応は変わってきません。コミュニケーションで一番重要なことは「相手を思いやるコミュニケーション」を図ることです。それは、「相手への興味」や「相手への配慮」、「相手への質問」、「相手への気遣い」などです。相手への関心を示したコミュニケーションで、相手の行動や反応が変わってくる様子を本連載で紹介しました。

 この視点は、本来日本人が兼ね備えた「おもてなしの心」なのです。

 また、コミュニケーションは「自分が何を伝えたいか」ではなく、「相手に何が伝わったか」が重要であることを示しました。本当に相手に伝えたかったら、「何が伝わっていて、何が伝わってないのか」を確認することが大事なのです。そのために、コミュニケーションシナリオを組み立て、情報通信技術を活用した顧客の情報の収集がポイントになるのです。

工藤 浩志(くどう ひろし)

1960年生まれ。システム・インテグレーション会社および大手外資系コンサルティング・ファームを経て、2009年より2013年までシナジーマーケティングに在籍。超上流工程の要件開発方法論を確立。2008年12月、「ITコンサルタントのための要件開発入門」(技術評論社)を出版。要件開発方法論に基づいたサービス・サイエンスおよびコミュニケーション戦略フレームワークの確立を目指す。

■シナジーマーケティングについて

2005年6月設立。CRM(顧客関係管理)関連サービスの提供から、顧客とのコミュニケーション戦略の構築支援まで、企業のCRM活動全般を支援している。提供する主なサービスは、クラウド型CRMシステム「Synergy!360」など。
http://www.synergy-marketing.co.jp/