「従来のシステム構築のやり方では、サービスインの瞬間が最もユーザーにとっての価値が高く、運用するに従って価値が下がり陳腐化していく。こうした状況を打破したかった」。ソニックガーデンの倉貫義人氏(代表取締役社長)はこう話す。

 倉貫氏の問題意識はこうだ。サービスインの瞬間は受け入れテストが終わり、仕様通りのものができている。しかし、一度運用が始まると、徐々に業務の実態とシステムの機能やデータ構造が合わなくなっていく。保守開発でその溝を埋めようとするが、徐々に追いつかなくなり、数年から十数年に一度、大規模刷新が行われる。こうしたシステムのライフサイクルについて「無駄が多い」と倉貫氏は指摘する。

 陳腐化と大規模刷新を繰り返すシステム開発の状況を打破するために何をすればいいのか。倉貫氏は「『完成すること』を重視するシステム開発から『持続すること』に重きを置くシステム開発へのパラダイムシフトが必要だという。そのためには、運用後もユーザーの要求をシステムに取り込み続け、技術も最新のものを適用していく。

 例えば、サービスインの時点までにバグを撲滅する開発ではなく、バグが出てもすぐに直せるようにする開発に、サーバーがダウンしないようにする設計ではなく、サーバーがダウンしてもすぐに復旧できる設計に、考え方を変える。そうして、常に最高の品質で最新のシステムをユーザーに提供し、ユーザーにとってのシステムの価値を向上し続けるのだ。

 このような、継続することに重きを置いたシステム開発を「カイゼン型開発」と呼ぶ。前置きが長くなったが、カイゼン型開発を実践しているのが倉貫氏なのである。倉貫氏はカイゼン型開発を進めるために、大手SIerのTISから独立し、ソニックガーデンを起業した。同社では、システム構築の考え方、開発体制、開発方法、開発ツール、システムの提供形態、ユーザーとの関係など、システム開発に関係することを、従来の一般的なやり方からガラリと変えている。

 XDev2012では、倉貫氏が試行錯誤を含めてたどり着いたカイゼン型開発の進め方を、事例を含めて解説してもらう。ネットサービスなどの変化が激しい業務向けのシステム、もしくは業務内容が大きく変わる可能性がある新規事業向けのシステムを担当するエンジニアは、特に参考になるはずだ。

ユーザー価値を最大化するカイゼン型開発
ソニックガーデン 代表取締役 倉貫 義人氏
ソニックガーデン 代表取締役 倉貫 義人氏

【講演概要】 ユーザーにとってのシステムの価値を最大化させることはすべてのITエンジニアに求められています。そのためには、カットオーバー時に最高の品質を提供している今の開発スタイルでは限界があります。運用しながらシステムの価値を継続的に高め続けていく「カイゼン型開発」に踏み出しましょう。カイゼン型開発は「完成指向」から「持続可能」へのパラダイムシフトです。考え方、開発プロセス、体制、ツールなどをどう変えるべきなのかを解説します。

■ 11月7日(水)13:15-13:55 C会場
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