ネットワーク業界で何かと話題に事欠かないキーワードといえば「OpenFlow/SDN(Software Defined Network/Networking)」ではないだろうか。

 例えばこの7月、OpenFlow/SDNのパイオニア的な存在である米ニシラを、米ブイエムウェアが10億ドル超で買収したというニュースはまだ記憶に新しい。また4月に、米グーグルが「データセンター間ネットワークを100% OpenFlow/SDNで運用している」ことを明らかにしたときは業界に大きな衝撃が走った。

 製品・サービスの動きも活発だ。「OpenFlowに対応した」「SDNを実現する」といった点をアピールする新しいネットワーク製品やソリューション、サービスの発表、それに伴う提携や代理店契約が相次いでいる。

 一方で、国内企業のユースケースというと、まだ数えるほどしかない。やっと製品/サービスの選択肢が増えてところではあるが、話題先行の感は否めない。多くの一般企業やエンドユーザーはOpenFlow/SDNに無関心だ。

 それも無理はない。OpenFlow/SDNの持つメリットはネットワークの仮想化によってもたらされるもので、ネットワークの設定や変更が楽になるという点だ。これはネットワーク管理者にとっては大いにありがたいものの、利用者にとっては関係ない。

写真1●左上から時計回りで、カブドットコム証券 社長付IT戦略担当 谷口有近氏、さくらインターネット研究所 上級研究委員 大久保修一氏、NTTデータ ビジネスソリューション事業本部ネットワークソリューションBU部長 馬場達也氏、ブロケード コミュニケーションズ システムズ Cloud Technology Officer 小宮崇博氏
写真1●左上から時計回りで、カブドットコム証券 社長付IT戦略担当 谷口有近氏、さくらインターネット研究所 上級研究員 大久保修一氏、NTTデータ ビジネスソリューション事業本部ネットワークソリューションBU部長 馬場達也氏、ブロケード コミュニケーションズ システムズ Cloud Technology Officer 小宮崇博氏
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 しかもネットワークの仮想化は、規模が大きいほど、構成が複雑なほど、増設や変更の頻度が多いほど、導入の効果が高くなる。このようなネットワークを抱えるのは、クラウドサービス事業者やデータセンター事業者だ。冒頭に紹介したグーグルをはじめとする事業者は、多様化するユーザーの要求と、既存のネットワーク技術の制約(VALNの上限など)との狭間で、手詰まりの状態にあった。この状況で登場したOpenFlow/SDNは、あたかも救世主のように迎えられたというわけだ。

 こうしてOpenFlow/SDNの議論が深まり、ネットワーク管理者にとってのメリットや、事業者における必要性がはっきりしてきた。とはいえ、ともすればこの点ばかりが強調されてしまうことから、一般企業にとっては「関係ないね」という冷めた見方が広がり、騒いでいるのは業界の一部だけ、という状況に陥りつつあるのではないだろうか。このままではOpenFlow/SDNは“一部の事業者のもの”になってしまいかねない。

 しかし実はOpenFlow/SDNは一般企業にも有用だ。そこで日経NETWORKと日経コミュニケーションは共同で、OpenFlow/SDNをテーマに、その可能性と実用性をユーザーとベンダーが語り合うパネルディスカッションを企画した。パネリストはいずれもOpenFlow/SDNに一家言を持つエキスパートばかり。それぞれの立場からOpenFlow/SDNの“今”について大いに語ってもらう。

 加えてこのパネルでは、SDNの「ソフトウエア定義」に注目し、その可能性についても議論する。ソフトウエアでネットワークを作れるのなら、そのメリットをネットワーク管理者にとどめておくのはもったいない。例えば、アプリケーションやサービスの開発者がプログラミングのレベルからネットワークを作ったり使ったりすることはできないのだろうか。

 また、ネットワークを動的に変えられるのなら、それを前提にしてもっと自由度の高い組織作りが可能になるのではないだろうか。こうした可能性について徹底的に話し合う予定だ。

ONFエグゼクティブディレクター ダン・ピット氏も登壇

写真2●米ONF エグゼクティブ・ディレクター ダン・ピット氏
写真2●米ONF エグゼクティブ・ディレクター ダン・ピット氏
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 なお、このパネルディスカッションの前には、「OpenFlowとSDN:ONFが描くネットワークの将来像」と題して、米ONF(Open Networking Foundation)のエグゼクティブ・ディレクターであるダン・ピット氏が登壇する基調講演を設けた。

 ONFはOpenFlow/SDNの標準化を進める団体である。標準化の最新動向や将来の方向性などに興味のある方は、ぜひこの講演から参加していただきたい(ダン・ピット氏のインタビュー:運用自動化にユーザーから強い要望、将来はネットワーク全体がSDNに)。

 また、ここではネットワーク仮想化の総称として「OpenFlow/SDN」を使ったが、実際には両者はイコールではない。OpenFlowはSDNを実現する技術の一つであり、SDNはOpenFlow以外の技術でも作れる。一方でOpenFlowは、今はネットワーク仮想化を実現する技術の一つとして捉えられることが多いが、本来はそれに限定したものではない。自由に新しいプロトコルを作れる仕組みを備えている。

 本パネルディスカッションでもOpenFlowとSDNの違いについては触れるが、それぞれをより具体的に知りたいという方は展示会場内の特設ブース「OpenFlow/SDNランド」に足をお運びいただきたい。OpenFlowの基本動作から、クラウドとの連携(オーケストレーション)まで、10を超える様々な動態展示を用意した。

 いずれも来場者が触わることのできる双方向型のシナリオを予定しているので、ぜひ自身で試して実感してほしい。また併設のミニシアターでは「Mr.OpenFlowに聞こう!」というQ&Aセッションを予定している。今さら聞けない質問も大歓迎だ。

【企画講演】
OpenFlowセミナー
<10月11日(木)11:05~12:50>

    <<基調講演>>
    OpenFlowとSDN:ONFが描くネットワークの将来像
    【講師】
  • 米Open Networking Foundationエグゼクティブ・ディレクター
    ダン ピット氏
    ※同時通訳あり
    <<パネルディスカッション>>
    OpenFlow/SDNはブームか本物か~ユーザー×ベンダーが語る可能性と実用性~
    【パネリスト】
  • カブドットコム証券 社長付 IT戦略担当
    谷口 有近氏
  • さくらインターネット研究所 上級研究員
    大久保 修一氏
  • NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 ネットワークソリューションBU 部長
    馬場 達也氏
  • ブロケード コミュニケーションズ システムズ Cloud Technology Officer
    小宮 崇博氏
  • 【モデレータ】
  • 日経NETWORK 副編集長 兼 日経コミュニケーション 副編集長
    加藤 雅浩
お申し込みはこちらから

【ダン・ピット氏のインタビュー記事】
運用自動化にユーザーから強い要望、将来はネットワーク全体がSDNに