記事の最下部に、本書製作の経緯と目的について編集者が語る動画を掲載しました。記事と併せてぜひ御覧ください。(2011/09/21)

 東日本大震災からわずか3日後の2011年3月14日、みずほ銀行は大規模なシステム障害を起こしました。義援金の振り込みが集中したのをきっかけに、振り込みの遅れや店舗でのサービス停止、ATM(現金自動預け払い機)の取引停止などを連発、影響は日を重ねるごとに広がり、収束までに10日間を要しました。

 みずほ銀行が大規模なシステム障害を発生させたのは、9年前の2002年4月にシステム統合に失敗して以来、2度目のことです。失敗が繰り返されるのは、みずほ銀行が根本的な原因を究明し、対策を取っていないからです。

 大規模障害を招いた直接の原因は、運用ミスや仕様の理解不足といったシステム部門の不手際でした。ただし、根本的な原因は、みずほ銀行とみずほフィナンシャルグループの歴代経営陣のIT軽視、あるいはITへの理解不足にあります。

 例えば、みずほの経営陣は老朽化した情報システムの刷新を先送りにしてきました。みずほ銀行の現在の勘定系システムが完成したのは、さかのぼること23年前、1988年のことです。

 みずほ銀行の勘定系システムは、バッチ処理とオンライン処理を交互に実行することを前提とした設計思想を採用しています。インターネットバンキングもATMの24時間稼働サービスも存在しなかった時代は、こうした設計に基づくシステムでも問題ありませんでした。

 その後、インターネットの普及などによって、勘定系システムを取り巻く環境は激変しました。にもかかわらず、みずほ銀行は23年前に構築した旧第一勧業銀行の勘定系システムを大幅に刷新することなく、使い続けてきました。

 その間、みずほの経営陣は、勘定系システムを長年にわたって使い続けるリスクを認識せず、システム刷新を怠りました。こうした実態が勘定系システムの老朽化を招き、振り込み処理の積み残し増加や、バッチ処理の“突き抜け”によるATMサービスの停止といった、システム障害の影響拡大につながってしまいました。

 思い返せば、9年前のみずほ発足直後に発生したシステム障害も、その真因は今回と同じく、当時の経営陣にありました。経営陣がシステム統合のリスクを読み切れず、旧3行の担当者による主導権争いを抑え切れなかったのです。みずほ銀行の2度のシステム障害は、どちらも経営陣のIT軽視、IT理解不足に根本的な原因があると言えます。

 経営陣のIT軽視と、それによる情報システムの老朽化、システム部門におけるミス増加は、みずほ銀行に限らず、多くの企業が抱える問題です。企業や組織を支えてきた情報システムは現在、危険な状態に入りつつあり、早急に抜本的な対策を講じる必要があります。多くの企業にとって、みずほ銀行の事例は、決して他人事ではないのです。

 「大規模なシステム障害を防ぐためには、今こそみずほ銀行の失敗に学ぶべきである」。こう考え、日経コンピュータは「システム障害はなぜ二度起きたか みずほ、12年の教訓」を緊急出版しました。大規模障害を未然に防ぐために、ぜひお読みください。

システム障害はなぜ二度起きたか みずほ、12年の教訓

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日経BP社発行
日経コンピュータ編
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