復興のために技術者がやったこと、これからできること

【講演概要】東日本大震災発生後、ITを被災者の支援や復興に役立てようと、企業の枠を超えて立ち上がった技術者たちがいます。Webサイト「sinsai.info」は、のべ250人のボランティアが被災者支援や復興に関する情報を集約。被災者支援や復興に役だつアプリの開発を支援するプロジェクト「Hack for Japan」では、数百人がハッカソンやオンラインのアイデアソンに参加、アプリやサービスが生まれています。なぜ技術者たちは立ち上がったのか。そして今求められている、技術者が復興のためにできることは何か。2つのプロジェクトの現場からの報告です。

sinsai.info インフラ班/法務班 班長 嶋坂 紀隆 氏
sinsai.info インフラ班/法務班 班長 嶋坂 紀隆 氏
Hack for Japan スタッフ 山崎 富美 氏
Hack for Japan スタッフ 山崎 富美 氏

■ 9月16日(金)16:00-16:40 C会場
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担当記者による紹介記事

 本セッションでは、「IT技術者の力を、被災者支援や復興支援に役立てたい」──そんな思いで活動すべく立ち上がった二つのプロジェクトのメンバーに登壇していただく。震災情報集約サイト「sinsai.info」と、アプリケーション開発支援プロジェクト「Hack for Japan」だ。ともにボラアンティアでの、企業の枠を超えて集まった技術者たちによる取り組みだ。

300人以上のボランティアで震災関連情報集約

写真1●sinsai.infoの画面
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写真2●sinai.info 嶋坂紀隆氏
写真2●sinai.info 嶋坂紀隆氏

 sinsai.info写真1)は、震災関連情報を集め、地図上に表示するサイトである。被害状況や避難所、雇用情報など「現在までに1万件以上の情報が登録されていて、技術者や情報検証のボランティアあわせて300人以上が参加した」(sinsai.info 嶋坂紀隆氏、写真2)。

 sinsai.infoは3月11日、東日本大震災発生後4時間足らずで開設された。1人の技術者がサーバーにオープンソースのUshahidiをインストール。Twitterなどによる呼びかけで集まった多くの協力者が、情報の登録や殺到するアクセスへの対策など「それぞれのできること」をやり始めた。嶋坂氏もそうやってsinsai.infoに参加し、現在インフラ班と法務班のリーダーを務める。「誰にでも、できることはある。そのことを伝えたい」と嶋坂氏は言う。

被災地のニーズをITで形に

写真3●Hack for Japan ハッカソン(7月30日東京会場)の模様
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写真4●Hack for Japan 山崎富美氏
写真4●Hack for Japan 山崎富美氏

 Hack for Japanは、被災者支援や復興支援のアプリを開発するアイデアソンやハッカソンなどのイベントを行っている。Web関連企業の技術者などがネットで呼びかけ、震災の1週間後に第1回のアイデアソン、ハッカソンを開催した。第2回は5月に仙台市や会津若松市など6会場で、第3回は7月に岩手県遠野市のボランティアセンターなど5会場で開催(写真3)。全会場合わせて100人を大きく超える参加者があった。ネットでの参加者も合わせると数百人に上る。嶋坂氏をはじめとするsinsai.infoのメンバーも多数Hack for Japanに参加している。

 今、Hack for Japanが注力しているのは、被災地のニーズがIT技術者に伝わる環境作りだ。そのためにスタッフはガレキの残る被災地を回り、遠野、会津若松や仙台といった被災地に近い場所でイベントを開催している。山崎富美氏(写真4)も釜石や大槌を回り、遠野のボランティアセンターに泊まり込んで、ボランティアと枕を並べた。

 そのなかで、会津若松では放射線量測定装置の自作や測定値共有、遠野ではボランティアを支援するNPOのホームページ改善や、泥の中から掘り出した写真の修復作業を支援するシステム開発といったプロジェクトが動き出している。山崎氏のパートでは、これらの活動と、復興のために「これからできること」が語られる予定だ。「技術者はもちろん、デザイナーや、アイデアのある人にも参加してもらいたい」(山崎氏)。

 そして「ハックを楽しむこと」。復興にはまだまだ長い時間が必要だ。「Hack for Japanの活動も最低1年は続ける」(山崎氏)。長く続けていくために必要なのは楽しむことだと山崎氏は考えている。

(高橋 信頼=ITpro

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