~実測データの分析と国際研究動向から対策を導く~

【講演概要】ソフトウエアの規模は増大の一途をたどり、レビューを従来と同じ方法で実施するのは難しくなっています。膨大なテストをやみくもにがんばってこなすだけでは、必要な品質は確保できません。そこで、国際的な研究コミュニティーで検討されているレビュー技法を紹介します。
■ 9月7日(火)13:05-13:50 B会場
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担当記者による紹介記事
「ソフト開発の品質を高めるためには、上流工程でのレビューが大事だ」。こう考えて、設計レビューに力を入れるシステム開発の現場は少なくない。だが、設計レビューを重要視して多大な労力を投じても、重大な設計ミスの撲滅には必ずしもつながっていないのが現実である。
システム開発のレビューをテーマにした研究に取り組む奈良先端科学技術大学院大学の森崎修司氏(情報科学研究科 ソフトウェア工学講座 助教)は、「開発現場の多くで、レビューが空回りしたり、形骸化したりしている」と指摘する。
規模とレビューのやり方が合っていない
設計レビューは、設計工程までに作り込まれた設計書の欠陥をレビュー会議によって見つけ出すことで、開発するソフトウエアの品質を高めるためのもの。製造後のテスト工程でバグをつぶすのではなく、より上流の工程で品質を作り込むために、重要な作業である。
しかし多くの開発現場で、レビューが次工程に進むための儀式のように形骸化してしまっている。森崎氏は「レビュー本来の目的が実施メンバーの間で共有されていない。そのため、レビュー会議が欠陥を指摘する場ではなく、レビュー対象の説明をし、メンバー間で責任を共有するだけの場になってしまっている」と話す。
その結果、レビューの目的が、欠陥検出数の基準値をクリアすることに終始してしまう。そうなると、誤字・脱字といった軽微な欠陥の検出ばかりに労力を費やし、重大な欠陥の検出は二の次になるのだ。
なぜこのようなことが起こるのか。大きな要因の一つは、レビューの負荷の大きさにある。レビュー会議では、参加者はレビュー対象となる成果物に事前に目を通しておくことを求められ、その作業に時間を取られる。その後開かれるレビュー会議も長時間に及ぶ。
そしてそれだけ時間を掛けても、十分なレビューができるとはいえない。森崎氏は、「多くの現場では、開発するソフトウエアの規模とレビューのやり方が合っていない。レビュー対象の規模が非常に大きくなっている現在、網羅的に目視するレビュー手法には限界がある」と指摘する。効果的なレビューを行うには、目的を明確化し、レビューの観点を絞り込むなどの工夫が必要になる。
実プロジェクトでの実測データを解説
XDev2010では森崎氏が、「がんばるだけのレビューになっていませんか?~ 実測データの分析と国際研究動向から対策を導く~」と題したセッションで、ソフトウエア開発におけるレビューの問題点を浮き彫りにし、その解決策について解説する。
セッションではまず、既存のレビューのやり方が、形骸化したり空回りしたりしていないかをチェックするポイントを示してもらう。その上で、国際的なレビューの研究コミュニティで提案されているさまざまなレビュー技法を紹介し、各種の技法に関して重要な論点を明らかにする。
さらに、森崎氏の研究グループが実施しているワークショップでの検証結果も要注目だ。このワークショップは、奈良先端科学技術大学院大学がドイツのFraunhofer IESE(Fraunhofer Institute for Experimental Software Engineering)、日本IBMと共同で実施したもの。セッションでは、実際のプロジェクトや模擬プロジェクトでの検証から、レビュー目的の明確化と観点の絞り込みについて、実測データの分析結果を紹介する。
森崎氏は、レビュー観点の絞り込みをどのように実プロジェクトへと反映していくかを、文部科学省の研究プロジェクト「次世代IT基盤構築のための研究開発:ソフトウェア構築状況の可視化技術の開発普及」(StagEプロジェクト)で検討している。ここでの検討内容も、併せて解説してもらう。
多くのプロジェクトから得られた検証データに基づく解説は、ソフト開発に携わるすべてのITエンジニアにとって役立つ情報になるはずだ。ぜひ参考にしてほしい。
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