Linuxを使い始めて間もない人は、初心者ゆえの過ちをおかしてしまいがちだ。しかし、そういった過ちを避けるための支援を行うことにより、彼らのストレスを大幅に軽減することができるのである。

 Linuxに慣れていないユーザーは、(誰でもそうであるが)たくさんの過ちをおかすものである。しかし、落とし穴になりそうなところが事前に分かっているのであれば、ストレスの原因を大幅に減らすことができるはずだ。筆者は以前、新米のLinux管理者がおかしがちな過ちについての記事を執筆したことがあるものの、Linuxデスクトップの初心者がおかしがちな過ちについては採り上げたことがなかった。そこで本記事では、Linuxデスクトップの初心者にありがちな過ちを紹介する。

#1:Windowsを使っていると思い込む

 Windowsを使っていないことは誰でも分かるはずだと思うかもしれないが、そんなことはない。平均的なユーザーは、Windows以外のOSというものが存在しているということさえ分かっていない。事実、平均的なユーザーの大半は、Windows 7やWindows Vista、Windows XPの違いもはっきりとは認識していない(Windows 7を「自分の意思で入手した」という場合でない限り)。このため、すべてがWindowsと同じように動作する(あるいは同じように「動作しない」)と思い込んでいる初心者もいるというわけである。エンドユーザーに対しては、今までとは異なったOSを使っているのであり、動作も異なっているということを認識してもらう必要がある。

#2:exeファイルを実行しようとする

 WINEのことについて調べておき、インストールしておかない限り、.exeを拡張子に持つファイルをダブルクリックしても何も起こらない。しかしエンドユーザーは、ファイルをダブルクリックしても何も起こらないことに憤慨するのである。筆者はこれまでに、数多くのエンドユーザーがWindows向けのアプリケーションをダウンロードし、Linux上で動作させようとするのを見てきている。Windows上ではWindows用のアプリケーションしか動作しないのと同様に、Linux上ではLinux用のアプリケーションしか動作しないということを、ユーザーに対して明確にしておくべきである。WINEを使えばこういったことを行う必要がなくなるのはもちろんである。しかし、初心者にWINEを使わせるということはまず無理だろう。

#3:初心者向きではないディストリビューションを選択する

 ユーザーにとっての最も大きな問題の1つは、初心者向きではないディストリビューションを選択してしまうというものである。初心者の目線から、GentooやSlackware、Fedoraといったディストリビューションを見てほしい!これらはいずれも優れたディストリビューションであるものの、初心者にとっては荷が重すぎるのだ。もしもあなたが、これから初心者を支援しようとしているのであれば、初心者のためにも自らのためにも、慎重にディストリビューションを選択するようにしてほしい。選択にあたってはユーザーの能力やニーズ、ハードウェアを考慮に入れる必要がある。皆が勧めるからという理由だけでUbuntuを選択したりしてはいけない。初心者向けのディストリビューションは世の中に数多く存在している。それらを詳しく検討してから選択するべきである。

#4:ソフトウェアを見つけられない

 Linux初心者の多くはWindowsからの移行組であり、彼らはWindowsの場合と同じルートでソフトウェアを入手できると思っている。しかしほとんどの場合、その考えは間違っている。初心者は早いうちにパッケージ管理ツール、特にSynapticやPackageKit、Ubuntu Software Centerといったツールに慣れる必要がある。ユーザーにとってこういったツールはいずれも、必要なアプリケーションに出会える宝庫への鍵となるはずだ。

#5:OpenOffice.orgで作成したドキュメントを、デフォルトフォーマットのままでMicrosoft Officeユーザーに送信する

 この過ちは、本当によく見かける。Linux初心者はLinuxに移行したことに誇りを感じている。しかし、フォーマットに互換性がないせいで他の人にファイルを読んでもらえないことがあると知ってびっくりする(そして時にはWindowsに戻ってしまう)。Microsoft製品は他のOSやアプリケーションとの親和性が高くないということを忘れないようにしてほしい。そして初心者に対して、Microsoftの製品でも読めるファイルフォーマットで保存するように教えておくべきである。

#6:コマンドラインを避ける

 コマンドラインのことを、この世で最も複雑なツールであるかのように考え、何とか使わないようにしようとする人々の気持ちが、筆者にはどうしても分からない。Photoshopを自由自在に操れるにもかかわらず、コマンドラインで単純なrmコマンドさえ入力できないという人々がいることは筆者も知っている。しかし、なぜそうであるのかは分かりそうにない。コマンドラインは今や必要不可欠なものとは言えないが、知っておくことでより有能なユーザーになれるはずである。

#7:早々とあきらめる

 この過ちもまた、残念なことによく見かけるものだ。Linuxを数時間(あるいは数日間)試用した後、何らかの理由でLinuxをあきらめてしまうのである。どうしても使えない理由がある(例えば、プロプライエタリなアプリケーションやファイルフォーマットを使う必要があるなど)と判明し、あきらめるというのであれば筆者も納得する。しかし、Linuxが平均的なユーザーの要求に応えられないことなど、近頃ではほとんどないはずだ。Linux初心者のイライラに気付いたのであれば、少し念入りに指導してあげるようにしよう。初心者にとっては、そういった初期の壁を乗り越えられるかどうかが最大の難関となることもあるのだから。

#8:Windowsと同様のディレクトリ階層がLinuxにも存在すると考える

 LinuxにはC:\というものは存在しない。また、「\」という区切り文字も使用しない。さらに、ファイル名に空白を使うことも許されていない。これらは、初心者にありがちな過ちだ。Windowsのディレクトリ階層を1対1でLinuxにあてはめようとしても無駄である。C:\を/に、デフォルトユーザーを~/になぞらえることぐらいは可能かもしれないが、それ以上は無理だろう。Linuxではディレクトリ階層の頂点が/であり、最も重要なディレクトリは自らのホームディレクトリ(~/、すなわち/home/USERNAME/)であると、初心者に理解しておいてもらう必要がある。

#9:アップデートを見送る

 筆者はこれまで、Windowsのアップデートで何度も痛い目に遭っている。事実、前回そんなことが起こったのはいつだったか、思い出すことができない。このため、筆者のシステムは常に最新のアップデートが適用された状態になっている--そしてそれにはきちんとした理由がある。こういったアップデートはソフトウェアにセキュリティパッチを施し、新たな機能をもたらすものであるため、適用すべきなのだ。システムにセキュリティホールがあるという状態はユーザーにとって望ましいものではなく、機密情報が保管されている場合には特に避けるべきである。

#10:rootでログインする

 こういったことは言わなくてもよいはずである。しかし念のために言っておきたい。ユーザーには「rootでログインしないように!」と言っておくべきである。それでも彼らがそうする必要のある場合に備えて「rootでログインしないように!rootでログインするのではなく、ターミナルウィンドウをオープンし、rootに『su』するか、『sudo』を使う」ように言っておくべきである。最初の言葉を聞き逃しているといけないのでもう1度言っておく--ユーザーには「rootでログインしないように!」と言っておくべきである。

#11:知らないうちにPager機能を使ってしまい、ウィンドウを見失う

 PagerはLinuxデスクトップにおける最も便利な機能の1つである。しかし筆者はこれまでに、Pagerの目的や動作をきちんと理解できていない初心者を何人も見てきている。彼らはPagerのことを知らないために、デスクトップからウィンドウが「消えた」と思ってしまい、「どこに行ったんだ?ついさっきまであったのに!きっとクラッシュしたのだろう」という結論に達してしまうわけである。しかし、クラッシュしたわけではなく、おそらくは別のデスクトップが表示されているだけなのである。そう説明したとしても、「別のデスクトップだって?」といった言葉が返ってくるだろう。そして、この会話の行き着く先がどのようなものになるか、読者の方にも見当が付くのではないだろうか?Pagerとは何か、そしてPagerの有用性について初心者が理解できるように説明してあげてほしい。

#12:Linuxだからという理由でセキュリティをなおざりにする

 筆者としては「これまで12年間、Linuxを使ってきたが、ウイルスやワームにやられたり、ハッキングされたりしたことは1度もない」と誇らしげに言いたいのは山々だ。しかし、これが事実であるとしても、セキュリティのことを無視してもよいということにはならない。筆者は、ルートキットにやられたLinuxマシンを目にしたことがある。結果はひどいもので、データは失われることになる。ユーザーに対して、Linuxを使っているからといってセキュリティをなおざりにするべきではないと言っておくべきだ。セキュリティの重要性は、どのようなOSを使おうと変わるわけではない。

他の過ちは?

 こういった過ちの1つや2つは、誰しもがおかしているはずだ。しかしこれらは避けることが可能であり、他の初心者が避けられるよう手を差し伸べることもできるはずだ。彼らのLinuxエクスペリエンスをより良いものにするために、みんなで協力し合おう!本記事で採り上げた過ちの他に、あなたが遭遇した大きな過ちがあれば、コメント欄で教えてほしい。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ