Googleは,もはや中国で検索結果の検閲を行うつもりはない。そして,もし中国政府からの妨害があれば,Googleはサーバを撤去して,同国から撤退してしまうかもしれない。

 Googleの中国での事業運営に関する驚くべき方針転換は,Googleや他企業が人権活動家についての情報収集を目的とする「非常に高度なターゲット型攻撃」の被害に遭っていると同社が悟ったことで起こった。そうした攻撃に中国政府が関与しているかどうかは不明だが,Googleがブログ投稿で述べたところによると,他の米国企業も攻撃対象になっているという。

 Googleは米国時間1月12日午後,同社の経営企画担当シニアバイスプレジデント兼最高法務責任者(CLO)であるDavid Drummond氏が執筆した長文のブログ記事をリリースし,中国に対する方針を見直す決定について説明した。

 「彼らがあらわにしてきたこれらの攻撃と監視,そして,ウェブでの言論の自由をさらに制限しようとするこの1年間の企てを総合的に考慮した結果,われわれは中国における弊社事業の実現可能性を精査すべきだという結論に達した。われわれはこれ以上,Google.cnにおける検索結果の検閲を積極的に行わないことに決めた。そして,これからの数週間,われわれが法律の範囲内でフィルタのない検索エンジンを運営できる根拠について,中国政府と話し合っていくつもりだ。これによって,Google.cn,さらには中国にある弊社オフィスを閉鎖しなければならない事態になる可能性があることを,われわれは認識している」(Drummond氏)

 Googleは2006年にGoogle.cnを開設し,中国市場に参入した。Googleは当時,中国政府の方針に基づいて,検索結果の検閲を強制されることを分かっていた。しかし,Googleは検索結果が現地法に基づいて検閲されたことをウェブ検索ユーザーに通知さえすれば,急速に成長する中国市場でのビジネスチャンスを逃すことなく,「Don't be evil(邪悪になるな)」という同社の有名な誓約を守ることができると判断した。

 しかし,実際には,世界中に情報を広めたいGoogleの願望と,1989年の天安門事件のようなデリケートな話題に関して情報量を制限したい中国政府の願望のバランスを調整するのは,困難な作業だった。中国政府がコンテンツの許可基準に関して公布しているガイドラインは,非常に漠然とした内容だと考えられている。その結果として,中国のインターネット企業の多くは,政府が実際には不快と判断しないであろうコンテンツまでも大量に検閲している。

 Googleは攻撃の標的になった人権活動家が誰なのか明言しなかったし,中国政府が攻撃に関与していると同社が考えているかどうかについてもコメントしなかった。攻撃者は中国にいる2人の人権活動家が書いた「Gmail」メッセージの中身を入手することはできなかったが,アカウント情報および不特定数の電子メールの件名にアクセスすることには成功した。

 さらに,Googleは,人権活動家であるGmailユーザー数人のアカウントに何者かがアクセスしたことを確認したと述べた。Googleによれば,攻撃者の手口はセキュリティ突破ではなく,フィッシング詐欺だったという。

 Googleの調査に詳しい業界筋は,中国におけるGoogleの存在ということに関して言えば,ここ数カ月の出来事が「堪忍袋の緒が切れるきっかけ」になったと説明した。Googleはこれからの数週間,フィルタのない検索エンジンの提供を許可されるのかどうかについて,中国政府関係者と協議すると見られている。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ