不況だからといって、ニーズがなくなったわけではない。たとえRFP(提案依頼書)が出てこなくても、見込み客のニーズを顕在化して解決策を出せば、受注につながる。
 受注を得るため、ソリューションプロバイダが活用し始めた秘密兵器がある。それが“プレ提案書”だ。本特集では、実際に受注につながった各社のプレ提案書を独占公開。作成のポイントを明らかにする。



  「新しい営業手法に切り替えた結果、1000社以上の受注があったので、今年から本格的に取り組んでいる」(富士通ビジネスシステムの土屋政紀・中堅市場戦略室長代理)。

 「営業担当者が個人的に実施していたが、効果が出たので、8月から正式に研修に取り入れた」(伊藤忠テクノソリューションズの村川肇コンサルティング2部長)。

 新規顧客の開拓で、次々と成果を上げている営業方法がある。RFPが出る前のニーズが明確になっていない時点で“プレ提案書”を用いて、見込み客にアプローチする手法だ。実際の名称は「エグゼクティブサマリー」「討議用資料」「ご紹介資料」など各社で異なるが、狙いは同じ。新規顧客に入り込む仕掛けとして、プレ提案書を使うのである。

 「見込み客を訪問しても、ニーズが顕在化していない段階では案件の芽はつかめない。課題を感じても、どうすればいいか相手も分からないからだ。モヤモヤしている相手の頭をすっきりさせるものが必要だった」と、デルの堀川嘉朗ソリューション・サービス営業部長は話す。

 案件の芽さえ見付かれば、突破口が開ける。どんなソリューションを提案すべきかが分かる。営業効率も高まる。

 各社のプレ提案書には、共通の特徴がある。製品の機能ではなく、業務上の課題や解決策、過去の実績などを記述していることだ。

 「プレ提案書は、製品のパンフレットとは異なる。多くの営業担当者は、製品の機能を最初から細かく説明しようとするが、これでは見込み客の関心を引かない。相手は悩みを何とかしたいと考えているので、製品の機能を聞きたいわけではない」。こう話すのは、日本システムウエア(NSW)でクレジット業界を担当する中山正寛・第一営業統括部第三営業部マネージャーである。

 パンフレットで製品の機能を説明するだけでは相手のニーズをつかめない。どうすればいいか悩んでいる相手には業務の視点から切り込むことが有効というわけだ。

 もう一つの特徴は、「汎用プレ提案書」と「個別プレ提案書」の2種類を各社が用意している点である。

 まず業種や業務ごとに内容を絞り込んだ汎用プレ提案書で説明し、相手の悩みをはっきりさせる。忙しい相手に短時間で理解させるのがポイントだ。

 次に相手の状況を反映した、個別プレ提案書を作成する。ここでは、相手から入手したデータで導入効果を試算するなど、解決策の姿を具体的に想像できるようにする。

 「二つの段階を踏むことで、ぼんやりしていた見込み客のニーズが次第にはっきりする」(NSWの中山マネージャー)と言う。



本記事は日経ソリューションビジネス2009年10月15日号に掲載した記事の一部です。図や表も一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。
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